NY為替見通し=介入期待薄もドル円の上値は限定的か、1%の利上げ予想高まる中で米PPIに要注目

 本日のNY時間のドル円の上値は限られるか。日経新聞が「日銀が『レートチェック』為替介入の準備か」とのタイトルで、記事を掲載したこともあり、市場は為替介入に対しての警戒感がある。鈴木財務相が「レートチェックの有無についてはコメントしない」と発言しているが、そもそも「レートチェック」という言葉の定義自体が、何を意味するものかが決まっていないこともあり、記事自体は日銀及び財務省筋から報道に記載を要請したと考えるのが自然であろう。

 日銀は通常早朝に金融機関に、前日とその日の為替状況の動向や相場予測を聞いてくるのだが、それ以後は頻繁には連絡がない。しかし、ごく稀に通常と異なる時間に為替状況の動向を聞いてくることがある。1991年からのすべての日銀の介入を立ち会ってきたが、これらのヒアリングをレートチェックとし、介入の準備と判断をする一部関係者もいる。ただし、今回は日銀がすぐに介入をすることについては懐疑的な声が多い。

 理由としては、黒田日銀総裁をはじめ日銀首脳は兼ねてから「日本経済への円安のメリット・デメリットを比較すれば、プラス面の方が大きい」との見解を示していた。日本の輸入物価指数が3割を超えはじめたときですら、黒田総裁は後に謝罪し、撤回したものの「家計の値上げ許容度は高まっている」と発言するなど、円安によるインフレに対しても過度に警戒感はなかったこと言える。

 そして、それよりも重要なのが日本と比較にならないほど米国は高インフレに苦しんでいることで、米連邦準備理事会(FRB)が輸入物価を押し上げるドル売り介入を認めることは難しい。また、先週8日に行われた欧州中央銀行(ECB)理事会後のラガルドECB総裁の会見でも「高インフレは弱いユーロも原因」と発言し、世界中が通貨安によるインフレで苦しんでいる中で、一番インフレが進んでいない日本が率先して通貨安を導くことは各国から非難を浴びるだろう。

 このようなことで、早急な為替介入は期待できないが、敢えてドル円をNY市場で買い上げるのは難しいと予想する。NY時間に仮にドル円が持ち上げられても、本日のように口先介入が超短期的には効果が出ていることで、上値トライは短期的にはお預けとなりそうだ。

 本日の注目は8月の米卸売物価指数(PPI)になる。昨日のCPI発表後に米金利が急騰し、20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では1.00%の利上げを予想する声も出てきている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、次回のFOMCでの0.50%の利上げ確率は0%になり、0.75%の利上げ確率は66%、昨日まで0%だった1.00%の利上げ確率が34%まで上昇している。結果次第で、本日も米金利に連れて大きな動きをみせることになりそうだ。

・想定レンジ上限
 ドル円の上値目途は、本日下げの起点となった144.35円近辺、その上は7日と本日も超えることが出来なかった145.00円。

・想定レンジ下限
 ドル円の下値は、142.43円まで上昇している日足一目均衡表・転換線が最初の支え、その下は6日の大幅上昇になるまで抑えとなっていた2日高値140.80円。


(松井)
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