NY為替見通し=為替介入考えにくくドル円の基調は変わらずか、米債入札には要警戒

 本日のNY時間は、明日の8月米消費者物価指数(CPI)の発表を控え動きにくいが、ドル円は堅調地合いを維持するか。先週末は、三者会合(財務省・金融庁・日銀)が開かれたことで、円安に対する警戒感からドル円は一時141.51円まで円買い・ドル売りに反応した。また、週末のシンガポール紙「チャンネル・ニュース・アジア(CNA)」に木原副官房長官が「日本政府は必要ならば行き過ぎた円安には対策を講じなければならない(Japan's government must take steps as needed against excessive declines in the yen)」と発言したとの記事が掲載されたこともあり、早朝のオセアニア市場は円買いが先行した。

 しかしながら、市場参加者の間では現時点での円買い介入が行われる可能性は低いと思われることで、一時は143円半ばまで円売り・ドル買いが進んでいる。

 ポジション調整で円が買われる以外は、円買いは長続きしないとの予想が多いが、為替介入が難しいとされていることは、以下の点があげられる。

・「政治的なパフォーマンス以外に円安を気にしていないと思われる点」
 黒田日銀総裁をはじめ日銀首脳は兼ねてから「日本経済への円安のメリット・デメリットを比較すれば、プラス面の方が大きい」との見解を示していた。日本の輸入物価指数が3割を超えはじめたときですら、黒田総裁は後に謝罪し、撤回したものの「家計の値上げ許容度は高まっている」と発言するなど、円安によるインフレに対しても過度に警戒感はなかった。今回の懸念表明も、これまでの日銀総裁の中では一番政治的な結びつきが強い黒田総裁が、政治的なポーズに付き合っているだけの可能性が高いことがあげられる。

・「インフレ対応に追われる米国・FRBがドル安を望まないこと」
 日本と比較にならないほど米国は高インフレに苦しみ、米連邦準備理事会(FRB)が輸入物価を押し上げるドル安を認めることは難しいことあげもある。

 これらを考慮すると、ドル円が水準調整で下がったところは丁寧に買うというスタンスは今後も変わらないか。

 なお、本日は米国からは市場を動意づける主だった経済指標の発表はない。また、来週20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にブラックアウト期間に入ったため、FRB要人の講演も予定されていない。もっとも、本日は米3年債と10年債の入札が行われることで、入札後の米債の動きには要警戒となりそうだ。


・想定レンジ上限
 ドル円の上値目途は、本日の高値で9日の大幅下落前の安値143円半ばが抑えとなりそうだが、この水準を抜けると9日高値144.12円。

・想定レンジ下限
 ドル円の下値は、先週は141円半ばに位置し割り込むことが出来なかった日足一目均衡表・転換線(本日は141.63円)。

(松井)
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