週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、神経質な展開が続きそう
◆ポンド、英債券市場を見定めながら神経質な展開が続きそう
◆英中銀、無制限の国債購入も政策矛盾は否めず
◆加ドル、原油価格の動向に注目
予想レンジ
ポンド円 156.00-166.00円
加ドル円 103.50-108.50円
10月3日週の展望
ポンドは、英国債券市場の動向を見定めながら神経質な展開が続きそうだ。トラス英新政権の財政政策があまりにも積極的過ぎると受けとめられ、政策発表後から金融市場には動揺が走った。今後、英当局がどの程度まで市場参加者の不安を取り除けるかが注目される。
クワーテング英財務相は23日、大型減税案を柱とする「成長計画2022」を公表した。1972年以来の規模となる減税は、政策効果がすべて出る26年度には450億ポンド規模とされた。他、高騰するエネルギー価格への対策として半年で600億ポンドを注入することも決まっている。資金需要に対応するため、英政府は22年度の国債発行額を当初予定より5割以上も拡大せねばならない。財政や債券需給の悪化懸念が一気に強まり、英国債は一時大きく売られた(利回りは上昇)。
その後、金融市場の不安を抑えるため、イングランド銀行(英中銀、BOE)は20年超の国債を対象に10月14日まで無制限購入を決定。また、前回の金融政策委員会(MPC)で決めた保有債券の売却も、同月初めの予定から月末まで延期した。ただMPCの引き締め強化スタンスとは逆の方向性であり、矛盾は否めない。安定策を受けて英国債市場は大幅に反発したものの、1日で流れは反転。あくまで「時間稼ぎのための付け焼き刃」と見る向きは多いようだ。いずれにせよ、今後も急落・急騰となった英債市場の落ち着き度を見極める必要があるだろう。
国際通貨基金(IMF)や格付け会社ムーディーズなども、インフレ圧力が強まっているなかで、財源を伴わない大規模減税について見直しの必要性を警告している。国債購入期限の10月14日までに英政府が財政政策の縮小を発表しないと、再び英資産売りに晒されることになりそうだ。
加ドルは原油価格や米債券市場の動向に振らされる展開か。ハリケーン「イアン」の影響で米南西部メキシコ湾の石油生産が一部停止し、原油先物が反発したことは加ドルの支援材料。ハリケーン通過後に製油所がどの程度で通常稼働に戻れるかが注目される。また8月加消費者物価指数(CPI、前年比)が予想よりも鈍化していたため、カナダ中銀(BOC)の利上げペース減速も視野に入りつつある。政策金利の着地点は米国よりも低いと予想され、そうなると米金利動向により敏感になるだろう。なお、カナダ経済指標では、8月貿易収支や9月雇用統計などが発表予定。
9月26日週の回顧
トラス英政権が発表した大型減税案を背景にした財政悪化やインフレ長期化への懸念から、ポンドは前週末から下落。週初はその流れが更に加速し、対ドルでは1.03ドル台まで史上最安値を更新、対円でも一時148円台まで急落した。英緊急利上げへの期待感から反発後に再び売られるなど荒い値動きが続いたが、英中銀が国債買い入れを発表すると買い戻しが優勢に。期末に絡んだフローも追い風に対ドルでは一時1.12ドル台、対円では161円台後半まで値を上げた。
加ドルは対ドルでは一時1.38加ドル台、対円では104円台まで売られた。米金利上昇や原油安、英国発の金融不安などが重しとなった。しかしながら週後半には1.36加ドル台や106円前後まで持ち直した。原油の反発やリスクセンチメントの改善が加ドルの支えとなった。(了)
(小針)
◆英中銀、無制限の国債購入も政策矛盾は否めず
◆加ドル、原油価格の動向に注目
予想レンジ
ポンド円 156.00-166.00円
加ドル円 103.50-108.50円
10月3日週の展望
ポンドは、英国債券市場の動向を見定めながら神経質な展開が続きそうだ。トラス英新政権の財政政策があまりにも積極的過ぎると受けとめられ、政策発表後から金融市場には動揺が走った。今後、英当局がどの程度まで市場参加者の不安を取り除けるかが注目される。
クワーテング英財務相は23日、大型減税案を柱とする「成長計画2022」を公表した。1972年以来の規模となる減税は、政策効果がすべて出る26年度には450億ポンド規模とされた。他、高騰するエネルギー価格への対策として半年で600億ポンドを注入することも決まっている。資金需要に対応するため、英政府は22年度の国債発行額を当初予定より5割以上も拡大せねばならない。財政や債券需給の悪化懸念が一気に強まり、英国債は一時大きく売られた(利回りは上昇)。
その後、金融市場の不安を抑えるため、イングランド銀行(英中銀、BOE)は20年超の国債を対象に10月14日まで無制限購入を決定。また、前回の金融政策委員会(MPC)で決めた保有債券の売却も、同月初めの予定から月末まで延期した。ただMPCの引き締め強化スタンスとは逆の方向性であり、矛盾は否めない。安定策を受けて英国債市場は大幅に反発したものの、1日で流れは反転。あくまで「時間稼ぎのための付け焼き刃」と見る向きは多いようだ。いずれにせよ、今後も急落・急騰となった英債市場の落ち着き度を見極める必要があるだろう。
国際通貨基金(IMF)や格付け会社ムーディーズなども、インフレ圧力が強まっているなかで、財源を伴わない大規模減税について見直しの必要性を警告している。国債購入期限の10月14日までに英政府が財政政策の縮小を発表しないと、再び英資産売りに晒されることになりそうだ。
加ドルは原油価格や米債券市場の動向に振らされる展開か。ハリケーン「イアン」の影響で米南西部メキシコ湾の石油生産が一部停止し、原油先物が反発したことは加ドルの支援材料。ハリケーン通過後に製油所がどの程度で通常稼働に戻れるかが注目される。また8月加消費者物価指数(CPI、前年比)が予想よりも鈍化していたため、カナダ中銀(BOC)の利上げペース減速も視野に入りつつある。政策金利の着地点は米国よりも低いと予想され、そうなると米金利動向により敏感になるだろう。なお、カナダ経済指標では、8月貿易収支や9月雇用統計などが発表予定。
9月26日週の回顧
トラス英政権が発表した大型減税案を背景にした財政悪化やインフレ長期化への懸念から、ポンドは前週末から下落。週初はその流れが更に加速し、対ドルでは1.03ドル台まで史上最安値を更新、対円でも一時148円台まで急落した。英緊急利上げへの期待感から反発後に再び売られるなど荒い値動きが続いたが、英中銀が国債買い入れを発表すると買い戻しが優勢に。期末に絡んだフローも追い風に対ドルでは一時1.12ドル台、対円では161円台後半まで値を上げた。
加ドルは対ドルでは一時1.38加ドル台、対円では104円台まで売られた。米金利上昇や原油安、英国発の金融不安などが重しとなった。しかしながら週後半には1.36加ドル台や106円前後まで持ち直した。原油の反発やリスクセンチメントの改善が加ドルの支えとなった。(了)
(小針)