週間為替展望(ポンド/加ドル)-BOE、市場は0.5%利上げを織り込む

*注・・・エリザベス女王の死去を受け、9日から10日間、国を挙げて喪に服す期間に入ることで、英イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)は15日から22日に延期。


◆BOE会合、市場は0.50%の利上げを織り込み済み
◆ポンド、トラス英首相のエネルギー支援策は支えとはなりにくい
◆加ドル、ドル高・原油安が上値圧迫するもBOCのタカ派姿勢を支えに底堅いか

予想レンジ
ポンド円 162.00-168.00円
加ドル円 107.50-112.50円

9月12日週の展望
 今月の20-21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、全般ドル高・円安の流れが続くと見込まれる。各国の金融政策見通しに注目する相場展開が続いているなか、ポンドと加ドルは対ドルで上値が重い一方で、対円では引き続き底堅い動きが予想される。

 来週のイングランド銀行(BOE)の金融政策会合では、政策金利を0.50%引き上げ、2.25%に決定すると織り込まれている。9月会合後、今年は11月と12月の2回の政策会合を残すことになるが、年末までに政策金利を3.50%程度にまで引き上げるとの見方が強い。BOEは利上げが成長を鈍化させることを認めつつも、長期の経済安定のために目先は物価抑制を優先することが重要と認識しており、この9月会合で0.75%の利上げに踏み切る可能性もある。
 
 会合前に発表される7月のGDPや8月物価・雇用データの結果にも注目したい。予想以上の0.75%利上げが決定されれば、一時的にポンド買いに振れる可能性はあるが、エネルギー価格高騰による家計と企業への圧迫はかなり深刻で上値は限られそうだ。

 英保守党の党首選で勝利したトラス氏が英首相に就任した。同首相にはインフレ加速やリセッション懸念、エネルギー価格の高騰がもたらす記録的な生活費の上昇など厳しい現実が待ち受けている。トラス首相は8日、家計のエネルギー料金の上限を2年間、年2500ポンド程度に抑える計画を発表した。これによって、政府には約1500億ポンドの負担増になるとみられる。このエネルギー支援策は短期的にはエネルギー価格の抑制につながり、BOEの緊急的な利上げの可能性を低下させるが、財政拡大は徐々に物価上昇に油を注ぎ、さらなる金融引き締めが必要になる恐れもある。

 来週は加国内で加ドルの動意につながりそうな経済指標の発表予定はなく、ドルや原油相場をにらんだ動きが見込まれる。足もとでドル高・原油安が進んでおり、加ドルの上値は重いものの、カナダ銀行(中銀、BOC)がタカ派姿勢を維持していることを支えに下値も堅いと予想される。
 
 BOCは今週の会合で市場予想通りに0.75%の利上げに踏み切り、政策金利は先進国で最高水準となる3.25%となった。高インフレの定着リスクに警戒感を示し、声明では「政策金利をさらに引き上げる必要がある」との文言を維持した。また、引き続き今年後半には経済成長が緩やかになると予想しながらも、内需の強さを強調した。市場ではBOCが10月に0.25-0.50%、12月に0.25%の利上げを行い、今年最終的には政策金利を3.75-4.00%程度にするとの見方が強い。

9月5日週の回顧
 ドル高・円安が進むなか、ポンドドルは1985年以来の安値となる1.14ドル近辺まで下落した一方で、ポンド円は166円前半まで強含んだ。トラス英首相のエネルギー費対策発表を受けてポンド買いの動きが見られたが、反応は限定的。また、ドル高・原油安が加ドルの重しとなるも、BOCの積極的な引き締めが支えに、ドル/加ドルは1.30加ドル後半まで加ドルがじり高となり、加ドル円は2008年1月以来の110円台復帰を果たした。(了)

(小針)
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