東京為替見通し=「神田シーリング」の有無や日銀短観で円安の影響を見極める展開か

 30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、予想を上回った8月米個人消費支出(PCE)価格指数や米10年債利回りが3.83%台に上昇したことなどで、144.81円まで上昇した。ユーロドルはユーロ圏景気の後退懸念から一時0.9735ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、9月調査の日銀短観で円安の影響を見極めた後は、145円台に「神田シーリング」が設定されているのか否かを見定める展開が予想される。

 8時50分に発表される9月調査の日銀短観での大企業製造業の業況判断指数(DI)は+11と予想されており、6月調査+9からの改善が見込まれている。予想通りに改善していた場合は、黒田日銀総裁の「円安は日本経済にプラス」との見解を裏付けることになり、円売り要因となる。

 ドル円が上昇した場合、9月22日の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入以来到達していない145円台に「神田シーリング」が設定されているのか否かを確認することになる。

 9月30日、財務省は、9月22日の円買い介入金額が2兆8382億円だったことを公表し、1998年4月10日の2兆6201億円を上回る過去最大規模となったことを明らかにした。

 同月29日、米連邦準備理事会(FRB)は、海外・国際金融当局(FIMA)向けレポファシリティーから、28日時点に240億ドルの減少を公表したことで、本邦通貨当局のドル売り介入金額約195億ドルが含まれていたのかもしれない。日銀のレポファシリティーへのドル預入額は約1360億ドル規模と推定されており、ドル売り・円買い介入資金には余力が残されている。

 本邦通貨当局は、ドル円が100円を下回るようなドル安・円高局面では、本邦輸出企業の為替差損を少なくするために、外国為替資金証券(為券)で円資金を調達して、ドル買い・円売り介入を行い、購入したドルを米国債で運用するという「円・キャリートレード」を行ってきた。そして、ドル買い介入金額は、介入時点の実需の円買いに相当する貿易黒字額が目安とされた。

 今年の急激なドル高・円安により、貿易赤字が過去最大規模に拡大しつつある。本邦輸入企業の為替差損を少なくするために、実需の円売りに相当する貿易赤字額を目安とする大規模な円買い介入が続いていくのか否かを見極めることになる。そして、145円台に防衛ラインとしての「神田シーリング」が設定されているのか否かも探っていくことになる。

 なお7月時点での米国債保有高は、世界最大の1兆2343億ドルとなっており、持ち値は104円程度と推計されている。144円での含み益は50兆円程度になる。


(山下)
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