東京為替見通し=ドル円、黒田日銀総裁の会見に要注目か

 20日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは、ロシア産天然ガスの供給不安やイタリア政局不安などから1.0156ドルまで下落した。ユーロ円も140.43円まで下落した。ドル円は20-21日の日銀金融政策決定会合や26-27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)など、重要な金融イベントを控えて動意に乏しい展開となった。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日銀金融政策決定会合での大規模金融緩和政策の現状維持が予想されることで、底堅い展開が予想される。しかしながら、26-27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅が0.75%の可能性が高まっているため上値は限定的だと予想される。

 日銀金融政策決定会合では、大規模金融緩和政策の現状維持が予想されており、「展望レポート」では、今年の成長見通しを下方修正する一方、物価見通しは上方修正されるとの観測報道がある。
 黒田日銀総裁は、賃金上昇を伴う物価上昇が確認できるまでは、現状の大規模金融緩和政策を継続すると表明してきている。複数の関係者によると、黒田総裁は現時点で低金利による景気支援策をあきらめ、自分の功績を危険にさらすつもりはないとのことである。

 明日発表される日本の6月のコア消費者物価指数は前年比+2.2%と予想され、5月の前年比+2.1%からの若干の上昇が見込まれている。6月の輸入物価指数は、前年比+46.3%の上昇を記録し、比較可能な1981年以降で最大の伸びとなった。上昇率に占める円安要因の割合は、3月の2割台、4月の3割台から5月は4割を超えている。輸入物価の更なる上昇は、世論の批判の強まりを通じて、日銀に対する岸田政権の圧力が高まる可能性があるものの、参議院選挙での大勝を受けて、岸田政権による円安牽制は声を潜めている。
 リスクシナリオは、1970年代のような石油ショックの可能性が挙げられ、15時30分からの黒田日銀総裁の記者会見での質疑応答に要注目となる。

 6月30日、プーチン露大統領は、ロシアに新会社を設立し、ロシア・サハリン(樺太)沖の液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン2」の事業主体「サハリンエナジー」のすべての権利と義務を移管するよう命じる大統領令に署名した。権益を求める会社は、1カ月以内にロシアに再申請を行うことになっており、7月末にロシアからの天然ガス供給が途絶えるかもしれない可能性が高まりつつある。
 ロシアのメドベージェフ前大統領は、ロシア産石油価格上限が現在の価格の約半分になるとの見通しに触れた日本からの報道に対して、実行されれば市場に出回る原油が大幅に減り、価格が1バレル=300-400ドル超に上昇する可能性があると指摘している。
 JPモルガン・チェースのアナリストは、ロシア政府が原油の生産削減で報復した場合、北海ブレント原油は、日量300万バレル削減されれば190ドルに、500万バレル削減という最悪のシナリオの場合には380ドルに達すると警告している。
 石油ショックにより、日本のインフレ率が欧米英のような水準まで高騰した場合、日本銀行は、利上げを余儀なくされると思われる。日銀が利上げに踏み切り、イールドカーブコントロール(YCC)による0.25%の防衛を止めた場合、日銀が保有する500兆円規模の日本国債の含み損が膨らみ、日銀の債務超過を材料にした円売りが始まることになる。


(山下)
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