東京為替見通し=ドル円、米国のインフレ鈍化や欧州の地政学リスクで上値が重い展開か

 15日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10月卸売物価指数(PPI)の下振れを受けて米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを減速するとの見方から137.68円まで急落。その後クックFRB理事やバーFRB副議長が「インフレは高すぎる」との見解を示したことで139.69円付近まで反発した。ユーロドルは10月米PPIを受けて1.0479ドルまで上昇後、「ロシアのミサイルが北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドに着弾し、死者が出た」との報道で1.0280ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米国10月の卸売物価指数(PPI)の伸び率鈍化や欧州の地政学リスク回避の円買いなどで上値が重い展開が予想される。

 昨日は、ロシアが約100発のミサイルをウクライナに撃ち込み、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドにも着弾したとの報道を受けて、地政学リスク回避の動きが強まった。ただロシア国防省は、ロシアのミサイルがポーランド国内に着弾したという報道を否定し、「状況を悪化させることを意図した挑発である」と反論。

なおホワイトハウスは、バイデン米大統領がポーランド大統領と会談する、と表明している。リスクシナリオは、ロシアがNATO加盟国にミサイル攻撃したことが事実であった場合のロシアへのNATO軍による反撃となる。いずれにしても、本日も続報に警戒しておきたい。


 ドル円は、10月21日の高値151.95円から昨日の安値137.68円まで14.27円下落して、支持帯である日足一目均衡表・雲(下限:138.16円)を割り込む局面があったものの、ニューヨーク市場終値ベースでは上回って引けている。雲の下限は、本日は138.69円、明日17日は139.71円、18日は140.30円、19日は140.41円まで上昇していく。雲を下抜けた場合、一目均衡表では三役逆転の売り時代となる。下値の目処は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%押し(102.59円~151.95円)の133.09円となる。

 昨日、内閣府が発表した7-9月期実質国内総生産(GDP)は、前期比-0.3%、年率換算で-1.2%だった。民間最終消費支出は前期比+0.3%、民間設備投資は同+1.5%だったが、輸出が+1.9%、輸入が+5.2%で、外需寄与度が-0.7%となり、4半期ぶりのマイナス成長に転落した。

 今年の日本の貿易赤字は、1-9月で14兆3081億円と過去最大を記録しており、7-9月期も6兆3589億円となっている。7-9月期の名目GDPは、132兆6060億円だが、純輸出はマイナス7兆2776億円だった。過去最大規模の貿易赤字の拡大が円安の要因となっており、ひいては国力の低下要因となっている。また、7-9月期の交易損失は、輸入物価の上昇を主因として過去最大の19兆7284億円(※年率換算)となっており、円安は日本経済にとってマイナスであることが示された。

 本邦通貨当局は、ドル売り・円買い介入で円安を抑制しているが、今年の貿易赤字が20兆円規模まで拡大する可能性があることで、さらなる円安を抑制するには、9月と10月の円買い介入金額9兆1881億円では不足といえる。過去最大規模の円買い介入を断行してきた神田財務官が、神田シーリングを140円付近に設定しているのであれば、現行相場水準での追撃的な円買い介入の可能性もあることで警戒しておきたい。

(山下)
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