東京為替見通し=米金融政策を精査しながらの取引、まずはNYの動きを尊重か

 昨日の海外市場ではドルは軟調に推移し、対円では128.55円まで下値を広げた。また、ユーロドルも約10カ月ぶりとなる1.00ドルまでユーロ高ドル安が進行した。NY序盤は弱い1月ADP全米雇用報告を受けたドル売りが先行。午後には米連邦公開市場委員会(FOMC)やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が想定したほどタカ派に片寄らずと受け止められ、米金利低下とともにドル売り圧力が高まった。

 本日の東京為替市場では、未明に発表された米金融政策を精査しながらの取引となる。今年初めての米国・金融政策イベントを通過しても、短期金融市場の見通し(今後、追加の利上げがあったとしても年末にかけて利下げ)は大きく変わらず。中長期の米債券市場も金利先安観を強める動きだった。NY市場の反応を尊重するとすれば、ドルの上値は重いままか。ただ、労働市場への見方が分かれるなか、明日には1月米雇用統計の発表が控えており、アジア勢が積極的にドル円を売り込むということも考えづらそうだ。

 パウエルFRB議長は昨日、インフレの鈍化基調は認めて引き締めペースには慎重な姿勢を見せた。一方で「予測通りの経済動向なら、今年の利下げは想定せず」と年末までに緩和を期待する市場をけん制してもいる。それでも米株の反応は、ダウ平均の伸びは限定されたものの、金利低下に敏感なハイテク・グロース株は堅調と楽観論が広がりつつあるようだ。

 ただ、米WSJのFEDウォッチャーとして有名なニック・ティミラオス記者も自身のツイッターで指摘しているが、パウエル議長は依然として高インフレの状況を認識しており、「(インフレ抑制という)仕事はまだ終わっていない」ことを強調。FOMC内では複数回の利上げについて協議されていることも会見で明らかにされた。この辺りをアジア投資家がどのように判断するかを見極めることにもなりそうだ。

 昨日の1月ADP全米雇用報告では民間部門雇用者数が予想より7万人超も下振れ、過去2年で最低の伸びとなった。一方、その後に発表された12月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数は一部市場予想から上振れ。FRBが注視するとされる失業者1人に対する求人件数も高い水準だ。パウエル議長も「求人件数の数字は恐らく重要」と発言しており、JOLTSの結果を市場がより真剣に受けとめるようなら、昨日のFOMC後の反動もあり得るかもしれない。

 なお、米株引け後には、決算などが好感されて米メタプラットフォームズの株価が急騰している。アジアのハイテク株がつれ高となれば、為替もリスク志向の動きが強まる可能性はありそうだ。

(小針)
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