株式明日の戦略―新総裁は植田和夫氏、来週は日銀と米注目指標をにらんで波乱含み

 10日の日経平均は4日ぶり反発。終値は86円高の27670円。米国株安を受けても、寄り付きから3桁の上昇となり、27700円台に乗せた。SQ絡みの売買とみなされて開始直後に急失速したものの、27600円を割り込むことなく切り返し、再び上げ幅を拡大。上方修正や株式分割など好材料が多かった東京エレクトロン<8035.T>が大幅高となり、指数の押し上げに一役買った。200円超上昇して27800円台に乗せたところで上昇は一服し、そこからしばらくは値を消す流れが続いた。しかし、上げ幅を2桁に縮めてくると底堅くなり、14時をすぎた辺りからは27650円近辺でこう着感が強まった。新興銘柄は米国株安に売り反応を示しており、マザーズ指数やグロースコア指数は下落した。

 東証プライムの売買代金は概算で3兆4500億円。SQ日でもあり商いは膨らんだ。業種別では鉄鋼、保険、その他製品などが上昇した一方、石油・石炭、不動産、空運などが下落している。前期が大幅増益となり、自己株取得も発表したルネサスエレクトロニクス<6723.T>が14.7%高と急騰。反面、特別調査委員会の設置を発表したサンリオ<6136.T>が13.1%安と急落した。

 東証1部の騰落銘柄数は値上がり808/値下がり946。上方修正や1:3の株式分割など好材料が満載の東京エレクトロンが4.4%高。1銘柄で日経平均を約70円押し上げた。鉄鋼株が強く、通期の利益見通しを引き上げた神戸鋼がストップ高。日本製鉄も決算が好感されて大幅高となった。オイシックス、東海カーボン、ジャムコなどが決算を材料に急伸。「ROE10%を目標に掲げ、PBR1.0倍超の早期実現を目指す」と表明した大日本印刷が昨年来高値を更新した。

 一方、レーザーテック、ソフトバンクG、メルカリなどグロース株の一角が下落。三菱地所が決算を受けて売られ、三井不動産や住友不動産など他の不動産株にも売りが波及した。原油関連が弱く、今期の大幅減益計画を提示したINPEXや、下方修正を発表したコスモエネルギーが下落。リゾートトラスト、エイベックス、フジクラなどが決算を受けて大幅安となった。ほか、3Q決算発表の延期を発表したミマキエンジニアリングが大きく値を崩した。

 引け後にサプライズニュースが飛び込んできた。次期日銀総裁に元日銀審議委員の植田和男氏、副総裁に内田真一理事、氷見野良三前金融庁長官の起用が決まったとのこと。先に日経電子版の観測記事が流れ、その後に各メディアが一斉に報じている。植田氏は候補として名前がそれほど出てこなかった人物で、日経のニュースが出てきた際に、ドル円は鋭角的に円高に触れた。雨宮氏に関しては、6日に日経の観測が出てくる前の時点で総裁就任には難色を示していたことが伝わってはいた。ただ、この決定は雨宮氏が就任を頑なに拒んだことを意味する。今週は雨宮氏の総裁就任を早めに織り込む格好で日本株が堅調に推移していただけに、来週はその反動を警戒しておかなければならないだろう。


【来週の見通し】
 波乱含みか。10日夕方に植田和男氏の日銀総裁就任に関するニュースが出てきたことを受けて、週初からマーケットが慌ただしくなるだろう。米国では1月消費者物価指数(14日)と1月小売売上高(15日)が出てくることから、米国株はこれらの結果に神経質になると思われる。国内、海外の材料に日々振り回されることになりそうだ。14日までは決算発表が多く、週半ばまでは個別の活況がある程度相場を下支えする可能性が高い。一方、後半は市場エネルギーの低下が懸念される。日米の金利や為替の振れ幅も大きくなると思われ、不安定な地合いが続くと予想する。


【今週を振り返る】
 堅調となった。日銀後任人事の観測報道を材料に、週明け6日の日経平均は3桁の上昇。買いは続かず7日から9日にかけては3日続落した。ただ、日経平均の上げ下げが指数寄与度の大きい銘柄の影響を受ける日もあったことから、下落日でもさほど警戒ムードは高まらず、決算を材料とした個別物色が活況となった。米国株は1月の雇用統計が強かったことを受けてFRB高官からタカ派的な発言が相次いだことから、やや値動きが不安定となった。しかし、ドル高・円安期待が高まったことは日本株を下支えした。日経平均は2勝3敗と負け越しではあったが、下落日に底堅く推移したことから、週間では約161円の上昇。週初の発射台が高く、週足では4週ぶりに陰線を形成した。
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