週間為替展望(ドル/ユーロ)-米利上げ観測が再燃

◆ドル円、利上げ観測の再燃から堅調地合いを維持
◆200日移動平均線を約5カ月ぶりにブレイク
◆ユーロドル、景気減速懸念と米利下げ観測後退から上値の重さ続く

予想レンジ
ドル円   135.50-142.00円
ユーロドル 1.0500-1.0950ドル 

5月22日週の展望
 ドル円は、米利上げ観測が再燃するなか、テクニカル面も含め底堅い動きが想定される。米金利見通しに関する市場の見方が変化したきっかけは12日にミシガン大学が発表した5年先の期待インフレ率が2011年以来の高水準を付けたことだった。そして、今週に入ってメスター米クリーブランド連銀総裁やバーキン米リッチモンド連銀総裁、ローガン米ダラス連銀総裁などから相次いでタカ派的な発言が出たことで7月会合での利下げ期待は消滅したうえ、6月会合での利上げ確率が3割程度までに上昇した。わずか1週間足らずで米金利見通しがここまで変化したことを市場はまだ完全に消化出来ていない。ドルが一段と上昇する可能性はあるだろう。

 また、直近のリスク要因として顕在している米債務上限問題については、現在も与野党協議が連日で行われているが、バイデン米大統領は改めて合意に向けて自信を示したうえ、キーマンとなる共和党のマッカーシー米下院議長も「合意に至る道筋が見えている」と述べていることからも最悪の事態は回避されそうな状況となっている。

 テクニカル面で見ても、200日移動平均線を昨年12月以来、約5カ月ぶりに終値ベースで完全に上抜けしたことが大きい。今年は1月中旬に付けた127.23円を底に3月高値の137.91円まで値幅5.6円前後のレンジを続けてきたが、テクニカル的に重要な水準をブレイクしたことで上方向へ動きが加速する可能性が出て来ていることに注目している。

 なお、来週は23日に5月米購買担当者景気指数(PMI)速報値や5月米リッチモンド連銀製造業景気指数、24日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(2-3日分)、25日に1-3月期米国内総生産(GDP)改定値、26日に4月米PCEコアデフレーターの発表が予定されている。

 ユーロドルは、5月独ZEW景況感指数が2022年12月以来の低水準を記録したことで欧州の景気減速懸念が台頭しているほか、米利上げ期待再燃が重なって引き続き上値の重い展開が想定される。欧州中央銀行(ECB)の利上げ期待は依然として残っているものの、利上げの最終局面を指摘するメンバーも増えてきたため、景気不安が浮上したこともありハト派的な見解に注意した方が良さそうだ。

5月15日週の回顧
 ドル円は、米利下げ観測の後退や米債務上限交渉の進展期待から上値を試す展開となった。日経平均株価が大幅高となったことも買いを促し、週後半には2日高値の137.77円や3月8日高値137.91円を上抜けて年初来高値を更新。一時138.75円まで上値を伸ばした。

 ユーロドルは軟調。米長期金利の上昇に伴ってドル高が進んだほか、5月独ZEW景況感指数が悪化したことも重しとなり、一時1.0763ドルと3月27日以来の安値を付けている。(了)

(松井)
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