東京為替見通し=ドル円は安達日銀審議委員発言、豪ドルは豪4月CPIに要注目か

 28日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが4.44%台まで低下した局面で156.59円まで下落後、米10年債利回りが4.55%台まで上昇した局面で157.20円まで上昇した。ユーロドルは1.0889ドルから1.0855ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りの上昇を受けて底堅い展開が予想されるものの、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の警戒水準である157円台に乗せていることで警戒しておきたい。

 本邦通貨当局は、4月29日にドル円が160.17円まで上昇した後、159円台で第1弾の円買い介入、157円台に戻した局面で第2弾の円買い介入、そして、5月2日の早朝5時頃の157円台で第3弾の円買い介入を断行したと見なされている。
 おそらく、160円という絶対防衛圏の手前の157円~159円を死守している可能性があることで、本日の157円台への対応には警戒しておきたい。

 神田財務官は、5月24日に「日本から為替について投機的な動きによる過度な変動には引き続き注意が必要であることを伝えた」ことを明らかにしていた。米国を含め各国当局と緊密に連絡を取り合っていると述べ、介入が稀であることが望ましいのは言うまでもないとした上で必要な場合には適切に対応すると強調していた。

 本日の注目材料は、10時30分からの安達日銀審議委員の発言や4月豪消費者物価指数(CPI)となる。
 10時30分からリフレ派の安達日銀審議委員が金融経済懇談会に出席する。6月の日銀金融政策決定会合に向けて、植田日銀総裁や内田日銀副総裁のような金融政策正常化に積極的な姿勢を示した場合、利上げや国債買入オペの減額の可能性が高まることで、ドル円の上値を抑える要因となる。

 10時30分に発表される4月豪CPIは前年比+3.4%と予想されており、3月の同比+3.5%からはインフレの伸び率鈍化が見込まれている。リスクシナリオは、予想に反してインフレ加速の傾向が示された場合であり、豪準備銀行(RBA)理事会の利下げ期待が後退して、豪ドルの買い戻しにつながることになる。
 5月6-7日開催分のRBA理事会議事要旨では「インフレリスクが高まっていることを踏まえ、利上げを検討していた」ことが明らかになっている。

 昨日は、10年クライメート・トランジション利付国債の入札での最高落札利回りが1.040%となり、現物市場の新発10年債利回りを上回る弱めの結果となったことは、円高要因となった。
 しかし、2%の物価安定目標の実現を目指す日銀が公表した4月の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」は、3指標とも前年比伸び率2%を下回った。輸入価格上昇の価格転嫁の影響が剥落し続ける中で、基調的なインフレ指標は一段と伸びが鈍化した。

 5月27日、植田日銀総裁と内田日銀副総裁は、6月13-14日の金融政策決定会合で追加利上げの可能性を示唆し、新発10年債利回りは1.03%台まで上昇したものの、日銀が算出する基調的なインフレ指標は鈍化していることが判明し、円安要因となっている。
 植田日銀総裁は「インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功した」と述べ、内田日銀副総裁は「過去25年間の金融政策運営におけるデフレとゼロ金利政策との闘いの終焉が視野に入った」と述べていた。



(山下)
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