東京為替見通し=円安基調変わらず、東京都区部CPI・期末・中国PMIなど注目材料豊富

 海外市場でドル円は、米経済指標が良好な内容だったことが伝わると、米金利の上昇とともに全般ドル買いが先行し一時144.90円と昨年11月以来の高値を更新した。ユーロドルは6月独消費者物価指数(CPI)速報値が予想を上回ったことを受けて、1.0941ドルと日通し高値を付けた。ただ、その後全般ドル買いが優勢となり1.0860ドルと日通し安値を更新した。

 本日も円安基調は変わらずか。本日まず注目されるのが、6月の東京都区部消費者物価指数(CPI)。植田日銀総裁は28日にポルトガル・シントラで行われた欧州中央銀行(ECB)の中央銀行フォーラムで「基調的なインフレは目標を下回っている」と発言した。しかしながら、表面的なインフレ率だけでなく、刈り込み平均値も5月は3.1%まで上昇し、2001年1月以降で過去最高に並んでいる。6月の東京都区部のインフレがさらに加速し、6月の全国CPIも同様な結果になれば、日銀が重い腰を持ち上げイールドカーブコントロール(YCC)の上限拡大などを行う可能性もあるだろう。なお、植田総裁は「見通しの修正が必要になれば速やかに行動したい」「YCC、ある程度のサプライズが発生することはやむを得ない」と述べていることもあり、今後のサプライズには備えておく必要がありそうだ。

 円安地合いが続くと思われるが、長期間為替介入が行われなった場合は、最初の介入は東京勢が参入している時間帯に行われる傾向があることや、昨年の最初に円買い介入が9月22日は、ドル円が現行水準から離れていない145.90円に到達した後だったことを考えると、東京時間は円安のスピードは緩やかなものになるだろう。

 もっとも、現時点では日本と中国以外の中央銀行は、今後も金融引き締めを継続する傾向は変わらず、日米、日欧中銀などとの方向性の違いは鮮明で、円売りが弱まる流れでもないことは確かだ。なお、本日は月末・半期末・5・10日(ゴトー日)が重なっていることもあり、東京仲値やロンドンフィキシングにかけて、通常以上に大きなオーダーが入ってくることが予想される。当該時間には相場が急転することには注意したい。

 円以外の通貨では、昨日同様に人民元(CNH)と豪ドルの値動きに注目したい。昨日はドルCNHの基準値が市場予想よりも大幅にドル安・元高で決定されたことを受けて、オフショア市場でもCNH買い・ドル売りが強まり、豪ドルを始め複数の通貨でもドル安に連れた。本日もCNHの基準値と、その後に発表される6月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の結果が市場を動意づけるきっかけになるかもしれない。なお、中国製造業PMIは5月に続き、景況の強弱を判断する節目50を割り込む49.0との予想になっている。


(松井)
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