週間為替展望(ポンド/加ドル)-加ドル、6月雇用データに注目

◆介入警戒も円安の流れは変わらず、対円は堅調地合いを維持
◆ポンド、景気懸念で上値は重くなりそう
◆加ドル、6月雇用データ次第で利上げ期待に変化

予想レンジ
ポンド円 180.00-186.00円
加ドル円 107.00-111.00円

7月3日週の展望
 来週も日本政府の円買い介入を警戒しつつ、円安の流れが続くと想定され、ポンド、加ドル共に対円では堅調地合いを維持しそうだ。ポンドは英景気の先行きへの懸念、加ドルはカナダ中銀(BOC)の7月会合での利上げ思惑後退が材料視され、対ドルでは上値の重い動きが見込まれる。

 イングランド銀行(英中銀、BOE)が6月会合で予想以上の0.50%利上げに踏み切り、市場での利上げ見通しも上方修正されているが、ポンドは英景気の鈍化懸念で伸び悩んでいる。高インフレと景気への懸念は英国だけの問題ではないが、先進国のなかで英国はインフレが一番高止まりしており経済成長も鈍い。足もとでも労働市場とインフレ指標の双方が持続的インフレの明確な兆候を示している。

 BOEはリセッションの引き金を引きたくないとしつつも、積極的な引き締めを継続せざるを得なくなっている。短期金利市場では12月に政策金利が6.25%まで引き上げられると織り込まれ、利下げに転じるのは来年9月ごろと見込まれているが、ベイリーBOE総裁は「ピーク金利が市場予想以上の水準・期間になる可能性がある」ことを示唆している。

 インフレの高止まりが続いており、BOEがリセッションを招くことなくインフレを退治するというソフトランディングの夢はますます遠ざかりつつある。生活費が高騰し、個人消費が抑制され、景気への逆風が強いなか、高金利政策が長引けば金融安定に衝撃が発生するリスクは飛躍的に高まり、より厳しいリセッションに突入する可能性がある。ポンドはBOEの引き締めが支えとなるも、年末までの利上げ継続が織り込み済みの現状では景気関連のデータにより敏感となりそう。景気鈍化懸念の高まりを背景に売り圧力が強まる可能性がある。

 加ドルは、やや上値の重い動きが見込まれる。カナダの5月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.4%と予想と一致するも、前月の+4.4%から伸びが鈍化した。伸び率は約2年ぶりの低い水準となり、BOCが重視するコアCPIも伸びが大幅に減少した。市場では7月会合での追加利上げ確率は6割超から3割超まで低下している。

 来週は、6月の雇用データに注目。BOCが予想外の利上げを実施した後に発表された5月の新規雇用者数は1.73万人減と9カ月ぶりに減少。失業率も5.2%と予想以上に上昇して、こちらも9カ月ぶりに悪化した。6月も低調な結果となれば、失業率の上昇がインフレ圧力の緩和につながるとの見方が高まり、利上げ期待は一段と弱まりそうだ。家計は回復力を示しているが、貯蓄率がコロナ禍前の水準に戻りつつある。債務返済コストの上昇による消費の低迷も懸念されている。

6月26日週の回顧
今週のポンドはBOEの積極的な引き締めによる経済への悪影響への懸念が重しとなり、ポンドドルは1.26ドル割れに押し戻され、ポンド円は183円後半で上昇が一服した。加ドルは予想比下振れの加5月CPIの結果が重しとなり、ドル/加ドルは1.32加ドル後半まで加ドル安が進み、加ドル円は110円手前で失速した。(了)
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