週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、英インフレ指標を見極め

◆ポンド、6月英インフレ指標を見極め
◆英中銀、英経済指標がさえず難しい政策運営
◆加ドル、6月CPI下振れの可能性に注意

予想レンジ
ポンド円 179.00-184.00円
加ドル円 104.00-107.50円

7月17日週の展望
 ポンドは19日発表の6月英消費者物価指数(CPI)に注目している。結果次第では、2022年4月以来の高値を更新した対ドルで更に上値余地を探りに行くことになりそうだ。そうなると、日銀が超金融緩和政策の修正に動き始めるとの思惑はあるものの、ポンド円も下がりづらくなるだろう。11日に公表された英雇用データでは、3-5月の「ボーナスを除く平均賃金の上昇率」が7.3%と過去最高に並んだ。また、前回値も7.3%まで上方修正された。イングランド銀行(英中銀、BOE)が注視している賃金の伸びが衰える兆しを全く見せておらず、インフレ抑制のために金融引き締めが長期化するとの見通しが強まった。ただし、失業率が予想外に悪化しており、労働市場は縮小の気配も出てきている。5月鉱工業生産もさえない数値となったことからスタグフレーション懸念が再燃しており、英中銀にとって難しい政策運営が続きそうだ。

 6月英CPIの前年比予想は4・5月の8.7%からは減速する見込みだが、8%台という高い水準は維持というのが大方の予想。また、前月・前々月とも予想比で上振れていることも念頭に置いておきたい。くわえて、エネルギー・食品やアルコール・たばこを除くコアCPIも重要。前回は前年比で1992年以来となる7.1%まで伸び率が加速した。

 加ドルは、週前半に発表の6月CPIが材料視される。5月は前年比3.4%と約2年ぶりの水準まで鈍化が確認され、金融当局が注視するCPIトリムも4%割れまで減速。しかしながらカナダ中銀(BOC)はインフレへの警戒感を緩めず、12日の会合で政策金利を4.75%から5.00%に引き上げることを決定した。利上げは2会合連続であり、金利水準は22年ぶりの高水準となる。BOCは声明文で「政策金利は十分に制約的ではない」」との文言を削除したが、インフレ目標2%の達成時期見通しを6カ月後ろにずらして2025年半ばとした。マックレムBOC総裁も記者会見で「必要に応じて、再度利上げする準備ができている」と表明している。

 ただ、短期金融市場はここから先の金利上昇には懐疑的であり、一先ずは利上げ休止との見方が現状では優勢だ。カナダ経済と結びつきが強い米国のインフレ減速が顕著となるなか、6月CPIが早期の3%割れを期待させるような結果もあり得る。そうなると、カナダ金利上昇を見込んだ加ドル買い持ちポジションの巻き戻しで加ドルの上値は重くなる可能性がある。

7月10日週の回顧
 ポンドは対ドルでは1.27ドル台から昨年4月以来の1.31ドル台まで上昇。英賃金データの伸び率加速によるポンド買い、米インフレ指標の下振れによるドル売りで押し上げられた。対円では183円台を頭に一時179円半ばまで下落。日銀の緩和修正に対する期待感が円買いに繋がった。
 
 加ドルも対ドルでは強含み、1.33加ドル付近から1.31加ドル手前まで加ドル高が進行した。BOC利上げと追加利上げ示唆で加ドル買い、米インフレ鈍化を受けたドル売り。一方、対円では今月下旬の日銀会合に対する思惑がより影響し、107円半ばから104円後半まで下押しした。(了)
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