株式明日の戦略-乱高下するも急落は回避、来週は個別物色が盛り上がる

 28日の日経平均は反落。終値は131円安の32759円。米国株の取引時間中に日銀が金利の操作を柔軟に運用するとの観測が流れたことで、米国の長期金利は上昇し、米3指数は失速して下落。為替市場では円高が急速に進行した。

 これを受けて、寄り付きから400円を超える下落。前場は日銀会合の結果発表を前に動きが取れない状態となり、水準を切り下げた後は一進一退が続いた。

 後場に入って日銀から金融政策会合の結果が発表されたが、長期金利に関しては0.5%をめどに一定の上昇を容認することが決定された。直前の観測通りの内容にいったん買い戻しが入ったが、指値オペの水準を1%に引き上げる措置も決定されたことで、これが国内金利上昇に対する警戒を高める形となって急落。安いところでは800円超下げる場面もあった。

 ただ、32000円に接近したところで反転すると、13時台半ば辺りからは鋭角的に値を戻す転換。引けにかけては32700円台に乗せ、高値圏で取引を終えた。

 東証プライムの売買代金は概算で5兆7000億円と高水準。業種別では銀行、保険、ゴム製品などが上昇した一方、電気・ガス、食料品、鉄鋼などが下落した。今回の施策が実質的な政策修正と受け止められたことから、三菱UFJ<8306.T>、三井住友<8316.T>、みずほFG<8411.T>など銀行株が後場に入って大きく水準を切り上げた。半面、1Qが大幅な営業減益となった大同特殊鋼<5471.T>が後場に入って急落した。

 東証1部の騰落銘柄数は値上がり757/値下がり1018。メガバンク以外にも楽天銀行、東京きらぼし、西日本FGなど銀行株の多くが大幅高。第一生命、T&D、かんぽ生命など保険株も急伸した。東京エレクトロンやレーザーテックなど半導体株の一角が上昇。相鉄HDや小田急が決算を材料に強く買われたことで、京王電鉄、西武HD、富士急行など鉄道株に資金が向かった。ほか、好決算が確認できたアマノやシンプレクスが急伸した。

 半面、ルネサス、キヤノン、オムロン、ヤクルトなどが決算が失望となって大幅安。国内金利が上昇したことで、ビジョナル、フリー、M&A総研などグロース系の銘柄が売りに押された。野村不動産や東急不動産など金利上昇が事業環境に逆風となる不動産株も全般軟調。為替が円高に振れたことで、日産自やマツダなど自動車株が売りに押された。直近上場のエコナビスタは強く買われる場面もあったが、引けでは6%近い下落と荒い動きとなった。

 本日、グロース市場に新規上場したクオルテックとGENDAは、地合いが悪い中、そろって初値は公開価格を下回った。しかし、ともに終値は初値を上回っており、GENDAはストップ高で終えた。

 きょうは日銀に振りまわされたが、日経平均は終わってみれば131円安(32759円)と常識的な下げにとどまった。きょう出てきたいくつかの変更に関しては、後に振り返ってみれば金融政策の転換点であったと言われるものなのかもしれない。ただ、現時点では日銀は緩和スタンスを維持しながら、ある程度現状のマーケットに柔軟に対応できる体制を整えた。きょうの場中には為替が円高に振れる場面があったが、引け後の植田総裁の会見中はドル円はそれを修正する方向で動いている。日銀の魔法にかけられたような1日であったが、サプライズがありながら急落を回避できたのは、日本株にとってかなりポジティブなことであったように思える。


【来週の見通し】
 堅調か。8月相場に突入するが、国内では決算発表が目白押し。今週、中央銀行イベントを一通り消化したことで、個別物色に全力投球といった地合いが想定される。メガバンク、トヨタ、大手商社株などの決算が中でも注目される。米国ではキャタピラーやアップルなど、日本の個別企業を刺激しやすい企業の決算が出てくる。金曜が米雇用統計の発表日で、米国株は週後半にかけて模様眺めムードが強まると思われる。ただ、雇用統計が強ければドル高・円安が期待でき、弱ければ米長期金利の低下が期待できる。日本株は悪材料には耐性を示し、好材料には強く反応することで、全体では水準を切り上げると予想する。
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