株式明日の戦略-後場一段高で週間でもプラス、来週は決算発表一巡で不安定か

 10日の日経平均は大幅反発。終値は269円高の32473円。米国株安を受けて、3桁下落スタート。しかし、寄り付きを安値にすぐに切り返し、場中は水準を切り上げる動きが続いた。半導体株を中心にグロース株が弱かった一方、原油高メリット銘柄やインバウンド銘柄が強く、全体では警戒ムードが大きく後退した。早い時間にプラス圏に浮上すると、前引けにかけては上げ幅を3桁に拡大。後場は売り手不在となって上を試す流れとなり、高値圏で終了した。引け間際には32500円台に乗せる場面もあった。グロース株が敬遠される中、マザーズ指数は終日軟調となった。

 東証プライムの売買代金は概算で4兆1400億円。業種別では鉱業、石油・石炭、パルプ・紙などが強い上昇。下落は精密機器、電気機器、鉄鋼の3業種のみとなった。1Qの大幅増益や1:3の株式分割が好感されたホンダ<7267.T>が急伸。半面、1Qが大幅な減益となった三菱マテリアル<5711.T>が急落した。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1340/値下がり441。上方修正、増配、自己株取得を発表したINPEXが、全市場の売買代金3位の大商いとなって16.6%高。出光興産、富士石油、コスモエネルギーなど石油卸が軒並み大幅高となった。ENEOSは1Q大幅減益を受けて決算発表直後に萎んだものの、盛り返して引けでは5%を超える上昇。決算を材料にコカコーラBJH、ロート製薬、日本板硝子、富士フイルムなどが急騰した。中国の訪日団体旅行が解禁されたと伝わったことから、三越伊勢丹や高島屋などインバウンド関連に資金が向かった。

 半面、1Qが大幅営業減益となったソニーGやオリンパスが売られており、オリンパスは12%安と派手に下げた。レーザーテックやソシオネクストなど半導体株の弱さが目立った。グロース株に逆風の地合いの中、決算発表を前にリクルートHDが大幅安。新興グロースの人気銘柄であるカバーが決算を材料に急落した。遊技機関連に決算で叩き売られる銘柄が散見されており、GCジョイコや円谷フィールズがストップ安となった。

 日経平均は三連休を前に大幅上昇。半導体株が弱かったが、インバウンド関連に買える材料が出てきたことで、グロース株を見切って非グロース株を選好する流れが強まった。このタイミングで中国の訪日団体旅行が解禁されたことは、日本株にとってフォローの流れ。ホテル、旅館、高級レストランなどには日本人客も含めて予約が殺到する可能性があり、そういったニュースが出てくることで関連銘柄が改めて刺激される展開も期待できる。団体客が以前のように化粧品や家電製品などを大量に購入してくれるようなら、好影響は広範囲に及ぶ。インバウンド銘柄の再評価機運が強まるようなら日本株の買い安心感も増してくるだけに、関連銘柄の深掘りが進むかに注目しておきたい。


【来週の見通し】
 方向感に欠ける展開か。三連休明けとなるため週初の値動きは荒くなる可能性があるが、決算発表が月曜14日までで概ね一巡することから、週半ば以降は市場エネルギーの低下が予想される。日米で経済指標がいくつか出てくるほか、16日には7月開催のFOMC議事要旨が公表されることから、市場の注目がミクロからマクロに移り、長期金利や為替動向に神経質となる状態が続くだろう。日経平均は32000円近辺では買いが入っており、引き続き同水準はサポートとして意識されると考える。一方、物色の柱は定まらなそうで、上値も重いとみる。結果、日々の振れ幅は大きくなったとしても、週間ベースでは現状から水準が大きく変化しないと予想する。
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