週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、中国経済停滞が重し

◆中国経済の停滞による株価下落で上値は限定的
◆豪ドル、利上げサイクル終了が近いことが重しに
◆ZAR、7月のインフレ指標に注目

予想レンジ
豪ドル円 90.00-96.00円
南ア・ランド円 7.20-7.80円

8月21日週の展望
 豪ドルは上値の重い展開となりそうだ。今週発表された7月の米小売売上高が市場予想を上回る伸び率を記録するなど、米国経済指標は依然として強い結果を示している。ただ、一方で中国の小売売上高や鉱工業生産は市場予想を下回るなど、中国経済の停滞長期化懸念が高まっており、リスク回避の動きに敏感な豪ドルの重しになりそうだ。7月の人民元建ての新規融資増加額が2009年以来の低水準を記録したこともあり、今週に入り中国人民銀行は1年物中期貸出制度(MLF)金利を2.65%から2.50%に引き下げたが、中国・香港株式市場の反応は限られるなど、中国経済の回復傾向が見えてこない。豪ドルは当面はこの影響を受けて、上値が重く推移することが予想される。

 また、豪州国内でもインフレ傾向が抑制されていることや、雇用情勢が悪化していることも、豪ドルの上値を抑える要因になる。今週発表された4-6月期の賃金指数は予想を下回り、インフレ抑制の効果が出てきている。1日に行われた豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨でも、利上げ予想に反して据え置きが決定された理由について、「これまでの大幅な引き締めが意図したとおりに機能している兆候がある」「インフレに関する最近の情報は心強い」などの見解が示された。RBAの利上げサイクルの終了が近いことを示唆しており、豪ドルの上値を圧迫しそうだ。なお、来週は豪州からは主だった経済指標は予定されていない。引き続き中国の景気動向を睨みながらの展開が予想される。

 南アフリカ・ランド(ZAR)はレンジ取引になりそうだが、上値は限定的と予想している。豪ドル同様に中国の景気減速がZARの重し。この数週間のZAR安も、南ア国内情勢よりもリスク回避の動きによる南アからの資金流出が主要因。来週も株式市場が弱含むとZARへの売り圧力は避けられないだろう。来週は、南アからは23日に7月の消費者物価指数(CPI)が発表される。6月は前年比で5.4%となり、2021年10月以来の水準まで低下。また、コア指数も今年2月以来となる5.0%まで低下している。インフレ抑制は南ア経済にとっては好要因だが、市場は南アと米国の金利差拡大を嫌気し、インフレが低下した場合はZAR売りに反応する可能性が高そうだ。


8月14日週の回顧
 豪ドルは対ドル・対円ともに弱含んだ。中国株の軟調地合いが続いていることが、リスク回避の動きに敏感な豪ドル売りにつながった。また、7月の豪雇用統計が失業率、新規雇用者数ともに予想を下回ったことも重しになった。対ドルでは0.63ドル半ばまで下がり、昨年11月以来の水準まで弱含んだ。もっとも、中国の介入期待で下値も支えられた。ZARは対円では横ばい、対ドルでは軟調推移となった。豪ドル同様にリスク回避の動きが進んだことで、ZARは上値が重くなった。対ドルでは6月以来となる19.29ZAR台までZAR安が進んだ。なお、南ア失業率は小幅に改善したが、依然として高い失業率となっていることで、市場の反応は限られた。(了)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。