東京為替見通し=1月実質賃金を見極め、その後は金融政策正常化に関する報道に要警戒

 6日のニューヨーク外国為替市場でドル円は149.10円まで下落した。2月ADP全米雇用報告が予想を下回り、米10年債利回りが一時4.07%台まで低下したことが重しとなった。ユーロドルは米長期金利の低下で1.0915ドルまで上昇。ユーロ円は日本時間夕刻の安値162.22円から米国株相場や日経平均先物の上昇に伴う円売りで162.96円まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、1月の実質賃金上昇率を見極めた後は、日銀の金融政策正常化に関する発言や報道に警戒していくことになる。

 日銀の金融政策正常化に関して、日銀政策委員の発言や観測報道が錯綜している。昨日は、時事通信が、日本銀行が18-19日に開催する金融政策決定会合で、正副総裁を含む政策委員9人のうち、少なくとも1人がマイナス金利の解除が妥当だと意見表明する見通しと報じた。
 
 来週13日に春闘の集中回答があり、15日に春闘の第1次集計結果が発表され、18-19日の日銀金融政策決定会合を迎える。足もとの翌日物金利スワップ市場(OIS)では、マイナス金利解除の確率は3月が50%程度、4月が80%程度になっている。

 植田日銀総裁は、2月22日に衆議院予算委員会に出席し、「消費者物価は去年までと同じような右上がりの動きが続くと予想している。そういう意味でデフレではなく、インフレの状態にあると考えている」と述べた。しかし、3月1日には、「現時点で達成が見通せる状況ではない」と述べている。

 また、2月29日には高田日銀審議委員が、マイナス金利解除などの条件となっている2%の物価安定目標の実現が「見通せる状況になってきた」と述べている。

 その後、3月2日の報道では、政府が物価の上昇傾向を受け「デフレ脱却」を表明する検討に入ったことが報じられた。政府は日本経済がデフレにあるとの見解を2001年3月の月例経済報告に併せて公表した資料で「緩やかなデフレにある」と示していたが、デフレ脱却を表明すれば、23年間にわたり安定成長を妨げてきた足枷が外れたと認めることになる。しかしながら、4日には鈴木財務相が観測報道を打ち消している。

 8時30分に発表される1月毎月勤労統計(現金給与総額)は前年同月比+1.2%と予想されており、昨年12月の上昇率からの増加が見込まれている。注目ポイントは、2022年4月から2023年12月まで21カ月連続してマイナスを記録している実質賃金の上昇率となる。

 1月全国CPIにおける実質賃金試算に使用される「持ち家の帰属家賃を除く総合」は+2.5%だった。もし、今年の物価水準がそのままで推移すると仮定すると、定期昇給(※約+2.0%程度)を含めた賃上げ率が4.5%を超えないと実質賃金はプラスにならないことになる。


(山下)
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