東京為替見通し=6月日銀金融政策決定会合への警戒感が上値を抑える展開か

 27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、メモリアルデーの休場で閑散取引の中、156.71円付近まで下押しした後、引けにかけて156.94円付近まで下げ渋った。ユーロドルは、ビルロワドガロー仏中銀総裁発言「欧州中央銀行(ECB)は7月の追加利下げの可能性を排除すべきではない」で1.0841ドル付近まで値を下げた後、1.0862ドル付近まで反発した。ユーロ円は欧州株相場の上昇を背景に170.43円付近まで強含みに推移した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、昨日の植田日銀総裁と内田日銀副総裁の発言を受けて6月の日銀金融政策決定会合での追加金融引締めへの警戒感が高まったことで、上値の重い展開が予想される。

 また、本日は13時55分からメスター米クリーブランド連銀総裁やボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事の講演が予定されていることで、週末からの6月11-12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前のブラックアウト期間を控えて、FOMCの利下げ開始時期への言及には警戒しておきたい。
 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、11月FOMCでの0.25%利下げ開始と12月FOMCでの据え置きが見込まれている。

 内田日銀副総裁は、2月8日の奈良県での金融経済懇談会での講演で、マイナス金利解除後の金融政策運営について、短期政策金利の連続的な利上げは想定しておらず、緩和的な金融環境を維持していく考えを明確にしていた。内田副総裁は、今後の経済・物価情勢次第としながらも、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」と表明した。内田副総裁の発言を受けて、3月の金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測が強まったものの、追加利上げを急がない姿勢が示されたことは、長期金利の低下要因、円安要因となった。

 昨日、内田副総裁は、過去25年間の金融政策運営におけるデフレとゼロ金利政策との闘いの終焉が視野に入ったとの見解を示した。内田副総裁は、3月に短期政策金利の操作を通じて2%の物価安定目標を目指す伝統的な金融政策の枠組みに戻ったことは「ゼロ金利制約を克服したことを意味する」と説明し、インフレ予想を2%にアンカーしていくという大きな課題は残っているが、「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入った」と語った。内田副総裁の発言を受けて、新発10年債利回りは2012年4月以来12年ぶりの高水準である1.025%台まで上昇した。

 市場では、6月13-14日の日銀金融政策決定会合で、円安対策のために、0.25%の追加利上げと現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れの減額、撤廃への警戒感が高まっているが、昨日の植田日銀総裁と内田日銀副総裁の発言が地均しだったのかもしれない。

 仮に6月会合で利上げが実施された場合、日米金融政策の格差が縮小し、本邦実質金利のマイナス幅が縮小するため、これまでのように円売りを進めれば、本邦通貨当局が投機的な円売りと判断して円買い介入に踏み切る可能性が高まることになる。
 神田財務官は、3月会合でのマイナス金利解除の後の円安に対して、「日米のインフレ率の動向や見通し、金融政策、金利の方向性といったファンダメンタルズに照らすと強い違和感を覚えざるを得ない」と述べていた。

(山下)
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