東京為替見通し=5月東京都CPIを見極めた後は、今夜の米4月インフレ指標待ちか

 30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、1-3月期個人消費支出(PCE)コア価格指数が前期比年率+3.6%上昇と予想を下回り、米10年債利回りが4.54%台まで低下したことで、156.38円まで下落した後、156.88円付近まで反発した。ユーロドルは米長期金利の低下に伴い一時1.0845ドルまで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、5月の全国消費者物価指数(CPI)の先行指標である東京都区部消費者物価指数(CPI)を見極めた後は、今夜発表される4月米PCEデフレーターを控えて動きづらい展開が予想される。

 8時30分に発表される5月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合)は前年比+1.9%と予想されており、4月の同比+1.6%からの上昇が見込まれている。予想通りならば、5月の全国消費者物価指数(CPI)も、4月の同比+2.2%からの上昇が見込まれることになり、6月の日銀金融政策決定会合での金融政策正常化観測を高めることになる。

 また、本日は、19時に外国為替平衡操作の実施状況(介入実績:4月26日~5月29日)が発表されることで、市場筋による覆面介入の推定値約9兆円(4月29日:約5.5兆円、5月2日未明:約3.5兆円)との乖離を確認することになる。

 4月17日に開催された日米韓財務相会談の時、イエレン米財務長官は、自国通貨の急激な下落を巡る日本と韓国両財務相の懸念に留意する姿勢を示し、日本に対しては160円をレッドラインとして、ドル売り・円買い介入を容認していたとのことである。
 160円がレッドライン(本丸)ならば、4月29日の第1弾介入の159円台は内堀、第2弾介入と5月2日未明の第3弾介入の157円台は外堀と見なせることで、今週の157円台での本邦通貨当局の不在は戦術の変更なのかもしれない。

 岸田首相は経済財政諮問会議で、「最近の円安の動きを十分注視しており、政府・日銀は引き続き密接に連携していく」と円安阻止を宣言しており、財務省による円買い介入、日銀による金融政策正常化、そして6月に公表される「骨太の方針」でのレパトリ減税策などへの警戒感を高めている。

 昨日は新発10年債利回りが2011年7月以来の高水準となる1.1%まで上昇して、円買い・日本株売り要因となったことで、本日も債券市場の動向には警戒しておきたい。
 債券市場では、6月の日銀金融政策決定会合での追加利上げや国債買いオペの減額、撤廃への警戒感が高まっており、債券売り圧力が高まりつつある。
 植田和男総裁は、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、「長期金利は金融市場で形成されることが基本になる」と述べており、国債買いオペの撤廃の可能性を示唆していた。

 6月11-12日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、現状の金融政策の維持が見込まれているものの、利下げ開始時期を見極める意味で、今夜発表される4月米PCEデフレーターには要注目となる。
 米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているPCEだが、昨日発表された1-3月期のコアPCE指数は+3.6%と、速報値の+3.7%から下方改定された。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」での利下げ開始は、11月5日に実施予定の米国大統領選の直後の11月7日のFOMCとなっており、12月FOMCでは据え置きが見込まれていることで、年末のFF金利誘導目標は5.00-25%となっている。
 昨日はボスティック米アトランタ連銀総裁が「適切なら9月の利下げあり得る。政治的な理由ではない」と述べていた。

(山下)
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