東京為替見通し=ドル円、米大統領候補の討論会と円買い介入の可能性に要警戒か

 27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米長期金利の低下に伴う円買い・ドル売りで160.29円まで下落後、160.82円まで反発した。ユーロドルは米長期金利の低下を受けて1.0726ドルまで強含みに推移した。ユーロ円は円の先安観を背景に172.17円と1999年のユーロ導入以来の高値を更新した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、1986年12月以来の高値圏で月末・四半期末の円売り圧力が想定される中、本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の可能性に警戒しながら、米大統領候補の討論会や神田財務官に関する人事の発表にも注目しておきたい。

 8時30分に発表される6月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合)は前年比+2.0%と予想されており、5月の同比+1.9%からの伸び率の上昇が見込まれている。
 6月の全国CPIの先行指標となる東京都CPIが予想通りならば、6月全国CPIも伸び率の上昇が見込まれることで、7月30-31日の日銀金融政策決定会合での国債購入額の相応な減額幅への思惑から、円買い要因となる。

 10時(米国東部時間午後9時)から開催予定のバイデン米大統領とトランプ前米大統領との討論会では、インフレを巡る米連邦準備理事会(FRB)の金融政策や外国為替報告書で監視リストに入った日本や中国に関する見解に注目しておきたい。
 4月にトランプ前米大統領は、ドルが対円で34年ぶりの高値をつけたことに関して、米国にとって「大惨事だ」と述べ「バイデン政権は放置している」と批判していた。そして、「ドル高はわが国の製造業者などにとっては大惨事。競争力を失い多くのビジネスを失う」と述べていた。

 討論会でも同様の発言が予想されるものの、現状のドル高・円安相場への影響はないと思われる。しかし、米財務省が先日公表した外国為替報告書では、日本は対米貿易黒字(2023年:624億ドル)と膨大な経常黒字(対GDP比3.5%)により、監視リストに入れられたことで、バイデン米大統領のドル高・円安への見解には警戒しておきたい。
 また、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に関しては、バイデン米大統領は利下げを要請しており、トランプ前米大統領もかつて利下げ圧力をかけていたことから、両者とも利下げを主張すると思われる。

 本日、財務省から神田財務官に関する人事が発表される予定だが、退任となった場合、過去最大規模の円買い介入を断行した「令和のミスター円」が退場することで、現状の円売りに拍車がかかる可能性に警戒しておきたい。
 可能性は低いものの4年目続投となった場合は、引き続き円買い介入の目安と見なされている、神田財務官が注視しているボラティリティーの上昇を示すボリンジャー・バンド+2σの161.45円付近や「神田ライン」(過去28日間の安値から10円上昇)の164.55円(154.55円+10円)に警戒することになる。

 過去30年間で4年間務めた財務官は、黒田前日銀総裁(1999-2003年)、渡辺国際通貨研究所理事長(04-07年)、浅川アジア開発銀行(ADB)総裁(15-18年)の3人にとどまる。

(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。