東京為替見通し=介入困難で円安傾向変わらず、米独立記念日控え動きにくいか

 昨日のNY市場でのドル円は一時161.27円と日通し安値を更新した。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「データはディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆」「予想外の労働市場の軟化は行動のきっかけになり得る」と述べたことも相場の重しとなった。ただ、5月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を上回ったことも買い戻しを促し、161.62円付近まで持ち直した。ユーロドルは、1.07ドル前半で小動きだった。
 
 本日の東京市場では円安の流れは変わらないだろう。しかしながら、明日の米独立記念日を前に本日は米債・米株市場は短縮取引となることで、大きなレンジを期待するのは難しそうだ。

 連日円安傾向が続いており、市場では円買い介入への警戒感もある。しかしながら鈴木財務相は昨日、為替相場について「これまで話してきた通り」としつつも、「為替相場はいろいろな要因が絡み合い、市場において決定される」とも発言した。この発言への相場の反応は鈍かったが、前回の介入(4月29日と5月1日)後にイエレン米財務長官が介入に対して苦言を呈してから、財務相の発言に変化が生じているのは確かだ。

 本邦通貨当局が円買い介入を実施する以前は、「過度の変動にはあらゆるオプションを排除せずに対応」「(円安の影響)マイナス面への懸念もっている」など、円安への懸念を示し、介入を含めた対応方針を表明していた。しかし、イエレン発言後は為替の動きは「市場において決定される」へと変化している。この発言は5月中旬にイエレン米財務長官が「G7の国の通貨は市場で決定されるべき」との発言とほぼ同じ内容なのも興味深い。

 前回の介入後に米国がドル売りに不快感を示したことで、財務相も表立って円安について強めの懸念は表明できず、余程過剰な動きではない限り介入も出来ないことなのかもしれない。

 明日は米国市場が休場で、本日は米債・米株市場は短縮取引となり、市場参加者は極力取引を控える傾向になりそうだ。ただし、米国からは多くの経済指標や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨等が発表されることには要警戒。

 また、明日は英国で総選挙が行われ、14年ぶりの労働党政権の誕生が見込まれる。加えて、週末はフランス下院で決選投票が予定されていることなど、これまで比較的落ち着いた動きだった欧州通貨が選挙を前にして動意づく可能性には留意しておきたい。

 なお、本日は本邦からは主だった経済指標の発表は予定されていない。豪州からは5月小売売上高、同月住宅建設許可件数、中国からは6月Caixin中国サービス部門購買担当者景気指数などが発表されることで、オセアニア通貨が動意に繋がりそうだ。

(松井)
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