東京為替見通し=地合いは変わらず円安か、本邦個人消費支出にも注目
昨日の海外市場でのドル円は、前日のさえない米経済指標を受けて米利下げ観測が高まると、日米金利差縮小を意識した円買い・ドル売りが入り一時160.95円と日通し安値を付けた。ただ、取引終了間際には161.30円付近まで下値を切り上げた。ユーロドルは、欧州株相場の上昇に伴うリスク・オンのユーロ買い・ドル売りが入ると一時1.0814ドルと日通し高値を付けた。
本日の東京市場でも円安の流れを変えるのは難しいだろう。
3日発表された米経済指標(6月ADP全米雇用報告、米ISM非製造業指数など)の結果を受け、米金利の急低下に伴ってドル円は160.78円まで弱含んだ。その後も米金利は発表前の水準を回復できなかったのにもかかわらず、ドル円は同日に発表前水準を回復した。昨日も調整のドル売り・円買いが入り、160.95円まで弱含んだが、再び161円前半までドル円は戻している。多少の調整が継続される余地はあるが、円安地合いは変わらないか。
連日円安が続いているものの、今後の日米経済動向の先行きや、円安に歯止めをかける手段がないことを見ても円は売られやすそうだ。上述のようにさえない米経済指標の結果で米金利は低下し、CMEグループの「フェドウォッチ」でも年末までに2回の利下げ予想が優勢となっている。
しかしながら、バイデン米大統領の支持率が急落していることで、トランプ氏が大統領に返り咲いた場合の金利上昇リスクを市場は警戒し始めている。これはトランプ氏が中国からの輸入品に60%の関税を課すことを企てていることにより、米国のインフレが高進することが予想されることが要因。米ゴールドマンサックスに至ってはトランプ氏の返り咲き後には5回の利上げの可能性も指摘している。
一方で、本邦の1-3月期実質国内総生産(GDP)が前年比で改定値の-1.8%から-2.9%まで大幅に下方修正さるなど、日本はスタグフレーションに陥る危険性が高い。仮に年末までに米連邦準備理事会(FRB)が利下げを行った場合でも、その後は再び日米間の金利差が拡大する可能性が高いこともドル買い・円売り要因となる。
円安を止める手段についてだが、特効薬としての為替介入はあるものの、介入は中長期的には効果が薄いのはここ最近の動きでも一目瞭然だ。しかも、イエレン米財務長官が前回の介入後、米国のインフレを高めるドル売り介入を行ったことに不快感を示して以来、為替介入が行われていない。前回の介入は事前に本邦当局者が米当局者との連絡を怠っていたとの憶測も流れているが、いずれにしろ介入を警戒して相場観を見てしまうと、現在の本邦投機筋同様に円を売るチャンスを逃してしまいかねない。
また、岸田政権が円安対策を全く講じていないことで、円安をそれほど懸念していないのではないかとの声も聞こえてくる。
本日は本邦から5月の全世帯家計調査・消費支出が発表される。米国の米個人消費支出(PCE)は市場が大きく反応する指標だが、本邦の消費支出はこれまでの反応は限定的だった。しかし、今月の日銀政策決定会合では政策の変更もうわさされていることもあり、しっかりと結果を見ておく必要がある。今年の3月までは2人以上世帯の消費支出は13カ月連続前年比でマイナスを記録していたが、4月にようやく+0.5%まで回復した。ただし、内訳を見ると3月の318,713円から313,300円へと前月比ではマイナスになるなど、消費が回復しているとは言えない。本邦経済の弱さを消費支出でも確認された場合は、7月の政策決定会合で短期金利引き上げなどの積極的な政策変更が難しくなる可能性もありそうだ。
なお、本日は米国から通常は注目度が高い雇用統計(6月分)が発表される。しかし、上述のように3日の弱い米経済指標の後に、米金利の低下とともにドル円を売り込んだにもかかわらず、ドル円の下げ幅が限られていることを考えると、雇用統計の結果が予想よりも悪化した場合でも積極的にドル円を下攻めすることは難しそうだ。逆に米金利が上昇し、ドル買いを促す結果となった場合には、3日高値161.95円を超えて162円台を通過し、再び円安傾向に拍車がかかる可能性もあるだろう。
ドル円以外では、英国下院総選挙の開票が日本時間本日の6時から開始した。労働党が14年ぶりに政権を取ることが確実視されているが、選挙結果を受けて欧州勢がどのような動きをするかが注目される。
(松井)
本日の東京市場でも円安の流れを変えるのは難しいだろう。
3日発表された米経済指標(6月ADP全米雇用報告、米ISM非製造業指数など)の結果を受け、米金利の急低下に伴ってドル円は160.78円まで弱含んだ。その後も米金利は発表前の水準を回復できなかったのにもかかわらず、ドル円は同日に発表前水準を回復した。昨日も調整のドル売り・円買いが入り、160.95円まで弱含んだが、再び161円前半までドル円は戻している。多少の調整が継続される余地はあるが、円安地合いは変わらないか。
連日円安が続いているものの、今後の日米経済動向の先行きや、円安に歯止めをかける手段がないことを見ても円は売られやすそうだ。上述のようにさえない米経済指標の結果で米金利は低下し、CMEグループの「フェドウォッチ」でも年末までに2回の利下げ予想が優勢となっている。
しかしながら、バイデン米大統領の支持率が急落していることで、トランプ氏が大統領に返り咲いた場合の金利上昇リスクを市場は警戒し始めている。これはトランプ氏が中国からの輸入品に60%の関税を課すことを企てていることにより、米国のインフレが高進することが予想されることが要因。米ゴールドマンサックスに至ってはトランプ氏の返り咲き後には5回の利上げの可能性も指摘している。
一方で、本邦の1-3月期実質国内総生産(GDP)が前年比で改定値の-1.8%から-2.9%まで大幅に下方修正さるなど、日本はスタグフレーションに陥る危険性が高い。仮に年末までに米連邦準備理事会(FRB)が利下げを行った場合でも、その後は再び日米間の金利差が拡大する可能性が高いこともドル買い・円売り要因となる。
円安を止める手段についてだが、特効薬としての為替介入はあるものの、介入は中長期的には効果が薄いのはここ最近の動きでも一目瞭然だ。しかも、イエレン米財務長官が前回の介入後、米国のインフレを高めるドル売り介入を行ったことに不快感を示して以来、為替介入が行われていない。前回の介入は事前に本邦当局者が米当局者との連絡を怠っていたとの憶測も流れているが、いずれにしろ介入を警戒して相場観を見てしまうと、現在の本邦投機筋同様に円を売るチャンスを逃してしまいかねない。
また、岸田政権が円安対策を全く講じていないことで、円安をそれほど懸念していないのではないかとの声も聞こえてくる。
本日は本邦から5月の全世帯家計調査・消費支出が発表される。米国の米個人消費支出(PCE)は市場が大きく反応する指標だが、本邦の消費支出はこれまでの反応は限定的だった。しかし、今月の日銀政策決定会合では政策の変更もうわさされていることもあり、しっかりと結果を見ておく必要がある。今年の3月までは2人以上世帯の消費支出は13カ月連続前年比でマイナスを記録していたが、4月にようやく+0.5%まで回復した。ただし、内訳を見ると3月の318,713円から313,300円へと前月比ではマイナスになるなど、消費が回復しているとは言えない。本邦経済の弱さを消費支出でも確認された場合は、7月の政策決定会合で短期金利引き上げなどの積極的な政策変更が難しくなる可能性もありそうだ。
なお、本日は米国から通常は注目度が高い雇用統計(6月分)が発表される。しかし、上述のように3日の弱い米経済指標の後に、米金利の低下とともにドル円を売り込んだにもかかわらず、ドル円の下げ幅が限られていることを考えると、雇用統計の結果が予想よりも悪化した場合でも積極的にドル円を下攻めすることは難しそうだ。逆に米金利が上昇し、ドル買いを促す結果となった場合には、3日高値161.95円を超えて162円台を通過し、再び円安傾向に拍車がかかる可能性もあるだろう。
ドル円以外では、英国下院総選挙の開票が日本時間本日の6時から開始した。労働党が14年ぶりに政権を取ることが確実視されているが、選挙結果を受けて欧州勢がどのような動きをするかが注目される。
(松井)