東京為替見通し=NYでの円買いもほぼ全戻し、新紙幣発行も円の価値はさらに低下

 昨日の海外市場でのドル円は、一時161.95円と1986年12月以来約37年半ぶりの高値を付けた。しかし、6月ADP全米雇用報告、米ISM非製造業指数などが弱い内容になると160.78円まで急落した。もっとも円の先安観を背景に円売りが出やすい面もあり、5時過ぎには161.75円付近まで持ち直した。ユーロドルは、米長期金利の低下とともに全般ドル売りが先行し、一時1.0817ドルと6月12日以来の高値を付けた。
 
 本日の東京市場でも円安の流れは変わらないだろう。昨日は米長期債利回りが大幅に低下したのにもかかわらず、ドル円は下げ幅をほぼ全て取り戻し、改めて円安トレンドの強さが感じられる。更に対円以外のドル相場は、多少のドルの買い戻しが入ったとはいえ、対円ほど戻し幅もなく円安が顕著になっている。昨日も円相場は、対ドルで1986年以来の円安になっただけではなく、対ユーロではユーロ導入以来の円の最安値を更新、ポンド円は2008年以来、豪ドル円は1991年以来の水準まで円安が進んだ。

 円安が継続している要因は、岸田政権が円安対策を真剣に講じるような動きがみえないことも一因。昨日は新紙幣発行に際して、日銀で記者会見を行った岸田首相は「新紙幣が親しまれ、経済に元気を与えることを期待」と述べたが、皮肉なことに円は数十年ぶりに価値を失っている。

 昨日の米経済指標の結果を受け、米国は年末までに複数回の利下げ予想が高まった。日銀の長期国債の買い入れの減額などは織り込みつつあり、日米金利差が縮小することを組み入れても円安傾向を変えられないでいる。このような状況下でも、政権が円安対策を講じないのは、むしろ円安を容認しているのではないかと市場は徐々に受け止め始めている。

 為替介入についても、前回の介入(4月29日と5月1日)後にイエレン米財務長官が介入に対して苦言を呈してから全くできないでいる。米国がインフレへの対応で苦心している中で、ドル売り介入を行えば、米国から非難を浴びるのは至極当然であり、今後も余程過剰な動きではない限り介入も難しそうだ。

 また、本日は米国市場が独立記念日で休場。そういった中でのドル売り介入などは、再びイエレン氏をはじめ米当局者が懸念を表明するのは疑いようがなく、介入を行うのは更に困難だろう。また、仮に介入などで円高が進んだ場合は、為替当局者と市場と間での対話がうまく取れていないことで、昨日NY時間のように円高局面があれば、すかさず円売りを待ち構えている投資家も多くいると予想される。

 本日のアジア時間では、本邦からは対外対内証券投資以外は主だった経済指標等の発表予定はない。また、オセアニアからは豪州の5月貿易収支が発表されるが、両指標とも大きく市場を動意づけるのは難しいだろう。ただし英国では本日、下院総選挙の投票が行われるため、欧州勢参入後はポンドを中心に神経質な動きになりそうだ。14年ぶりの労働党政権の誕生となることは確実視されているが、労働党がどの程度の議席を獲得するかによりポンドが動意づくことになるだろう。

(松井)
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