東京為替見通し=中長期の円安傾向変わらずか、債券市場参加者会合に要注目
昨日の海外市場でのドル円は、アジア時間に下値の堅さを確認すると、欧州勢の参入後には161.12円まで本日高値を更新した。その後、一時160.48円付近まで失速したが、売りが一巡すると再び160.80円台まで買い戻しが入った。ユーロドルは、欧州勢の参入後は1.0845ドルまで値を上げた。もっとも、仏政局不安が残る中で積極的に上方向を試す動きにはならず、上値も限られた。
本日の東京市場では引き続き調整の円の買い戻し観測があるものの、中長期的な円安地合いは変わらないだろう。先週、3日に1986年以来となる161.95円までドルが強含んだ後は、東京時間を中心に円の買い戻しの動きが根強い。昨日も東京仲値の値決めにかけては円が売られたものの、値決め後は徐々に円の買い戻しが優勢となった。本日も同様の動きとなる可能性もあるだろう。
もっとも、中長期的な円安傾向が反転するとは思えない。昨日発表された5月の毎月勤労統計調査では、現金給与総額のうち所定内給与は1993年1月以来の大きさだった。しかし、物価高の影響で実質賃金は、前月の-1.2%より弱い-1.4%で、今回でマイナスが26カ月連続となる過去最長を更新している。先週の1-3月期の実質国内総生産(GDP)確報値の大幅修正(前期比年率で-1.8%から-2.9%)、5月消費支出の予想比下振れなど、本邦の弱い経済指標結果が続いているが、どの結果も6月の日銀政策決定会合後に発表されている。よって、今月の日銀政策決定会合では積極的な政策変更が難しく、円金利上昇による円の買い戻しが断続的に続くことは考えにくく、円安トレンドは変わらないか。
一方で、米国もここ最近の経済指標では、インフレが落ち着きを取り戻す結果になっていることで、CMEグループの「フェドウォッチ」では年末までには2回の利下げを9割弱織り込んでいる。しかしながら、米大統領選挙ではバイデン現大統領の高齢不安が払しょくできず、トランプ前大統領が再び勝利を収める可能性が濃厚になり、トランプ氏が中国への大幅な関税引き上げを掲げていることで、トランプ政権樹立後の米長期金利の上昇を予想する声が多い。市場の第2次トランプ政権への注目度が増していることもあり、ドル売りを仕掛けることが難しい状況だ。
また、円安の流れが変わらないのは、岸田政権が何も円安対策を講じようとしないことで、市場が徐々に政権が円安を容認しているとの見解を持ち始めていることも一因。先週3日に発表された2023年度の税収は72兆円を超え、4年連続で過去最高を更新した。税収増は、歴史的な円安を背景に好調な企業業績で法人税収が約9000億円増加したことも一因。また、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、過去最大の45兆4000億円余りの黒字になったが、この要因の一つも円安があげられている。政権は言葉だけでは円安についての懸念を示しているが、円安を止める政策などを講じないのは財務省を含め政権も税収などのメリットを享受する方を優先しているからとの指摘も出てきている。
本日の本邦からのイベントでは、日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を集めて行う、「債券市場参加者会合」の開催に要注目。これまでも同会合は幾度も行われてきているが、植田日銀総裁が「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」と発言していたことで、注目度が増している。なお、同会合は銀行等グループが15時45分から、証券等グループが17時30分からの開始が予定されている。
円以外の通貨からも引き続き目が離せない。週末のフランス決選投票の結果がサプライズだったものの、昨日のユーロ相場は値幅が限られた。フランスの政局がまだ不透明なことで動意薄なだけで、この狭いレンジ取引が続くと考えるのは早計だろう。もっとも、本日は半期に一度のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言が予定されていることで、議会証言までは手を出しにくくなるかもしれない。
(松井)
本日の東京市場では引き続き調整の円の買い戻し観測があるものの、中長期的な円安地合いは変わらないだろう。先週、3日に1986年以来となる161.95円までドルが強含んだ後は、東京時間を中心に円の買い戻しの動きが根強い。昨日も東京仲値の値決めにかけては円が売られたものの、値決め後は徐々に円の買い戻しが優勢となった。本日も同様の動きとなる可能性もあるだろう。
もっとも、中長期的な円安傾向が反転するとは思えない。昨日発表された5月の毎月勤労統計調査では、現金給与総額のうち所定内給与は1993年1月以来の大きさだった。しかし、物価高の影響で実質賃金は、前月の-1.2%より弱い-1.4%で、今回でマイナスが26カ月連続となる過去最長を更新している。先週の1-3月期の実質国内総生産(GDP)確報値の大幅修正(前期比年率で-1.8%から-2.9%)、5月消費支出の予想比下振れなど、本邦の弱い経済指標結果が続いているが、どの結果も6月の日銀政策決定会合後に発表されている。よって、今月の日銀政策決定会合では積極的な政策変更が難しく、円金利上昇による円の買い戻しが断続的に続くことは考えにくく、円安トレンドは変わらないか。
一方で、米国もここ最近の経済指標では、インフレが落ち着きを取り戻す結果になっていることで、CMEグループの「フェドウォッチ」では年末までには2回の利下げを9割弱織り込んでいる。しかしながら、米大統領選挙ではバイデン現大統領の高齢不安が払しょくできず、トランプ前大統領が再び勝利を収める可能性が濃厚になり、トランプ氏が中国への大幅な関税引き上げを掲げていることで、トランプ政権樹立後の米長期金利の上昇を予想する声が多い。市場の第2次トランプ政権への注目度が増していることもあり、ドル売りを仕掛けることが難しい状況だ。
また、円安の流れが変わらないのは、岸田政権が何も円安対策を講じようとしないことで、市場が徐々に政権が円安を容認しているとの見解を持ち始めていることも一因。先週3日に発表された2023年度の税収は72兆円を超え、4年連続で過去最高を更新した。税収増は、歴史的な円安を背景に好調な企業業績で法人税収が約9000億円増加したことも一因。また、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、過去最大の45兆4000億円余りの黒字になったが、この要因の一つも円安があげられている。政権は言葉だけでは円安についての懸念を示しているが、円安を止める政策などを講じないのは財務省を含め政権も税収などのメリットを享受する方を優先しているからとの指摘も出てきている。
本日の本邦からのイベントでは、日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を集めて行う、「債券市場参加者会合」の開催に要注目。これまでも同会合は幾度も行われてきているが、植田日銀総裁が「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」と発言していたことで、注目度が増している。なお、同会合は銀行等グループが15時45分から、証券等グループが17時30分からの開始が予定されている。
円以外の通貨からも引き続き目が離せない。週末のフランス決選投票の結果がサプライズだったものの、昨日のユーロ相場は値幅が限られた。フランスの政局がまだ不透明なことで動意薄なだけで、この狭いレンジ取引が続くと考えるのは早計だろう。もっとも、本日は半期に一度のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言が予定されていることで、議会証言までは手を出しにくくなるかもしれない。
(松井)