東京為替見通し=ドル円は方向感のない値動き継続か、豪雇用統計に要注目

 昨日の海外市場でのドル円は、米CPI発表直後は売買が交錯。146.58円まで売られたものの、すぐに147.58円の本日高値を付けた。そのあとは再び146.58円付近まで値を下げたが、147.44円付近まで値を戻すなど、一進一退の動きが続いた。ユーロドルは一時1.1047ドルと年初来高値を更新したが、米2年債利回りが上昇したことなどが相場の重しとなり、1.1011ドル付近まで押し戻された。

 本日のドル円は方向感のない動きとなりそうだ。7月末の日銀政策決定会合後の植田日銀総裁の会見から市場流動性が崩れ、更に内田日銀副総裁の発言で悪化したドル円相場だが、この連日の動きを見ていても流動性が戻る兆しがない。本日も僅かなフローで146-147円台を中心に方向感のない動きとなりそうだ。もっとも、更にレンジを大きく広げるには材料不足なこともあり、神経質ながらも実需勢を中心に上がったら売り・下がったら買いの意欲が継続されるか。
 
 昨日発表された米国の7月消費者物価指数(CPI)は前年比で2.9%上昇と予想の3.0%をわずかに下回ったものの、概ね市場予想に沿ったことで値動きが限定されている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、50ベーシスポイント(bp)の利下げ予想が小幅に減り37.5%、25bpの利下げ予想が62.5%に上昇している。一時は米連邦準備理事会(FRB)による緊急利下げの噂もあったが、過熱気味だった市場の動きが落ち着いてきていることは、ドルの支えになりそうだ。

 一方で、昨日はニュージーランド準備銀行(RBNZ)が約4年ぶりの利下げを行い、英国のCPIが予想を下回るなど、多くの国でインフレ鈍化による利下げ圧力がある。その中で、日銀はインフレ警戒感を示していることで、中銀間の方向性の違いがあることはドル円の重しとなるだろう。また、昨日のドル円は反発したものの、他のアジア通貨は依然としてドル売り・アジア通貨買いが目立っていることも警戒したい。さらに、ウクライナを巡る戦争や中東情勢が依然として混迷していることで、リスク回避的な動きに傾きやすいことも円買い要因として残っている。

 本日は日本時間8時50分に本邦からは4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が発表される。通常は市場も反応する指標だが、今回は大きな動きは期待できないか。反応が限られる要因は1-3月期GDP速報値は前年比で-2.0%と発表されたが、6月の日銀政策決定会合前に発表された改定値は-1.8%に上方修正された。しかし、日銀がタカ派スタンスに動いた後に発表された確報値は-2.9%まで大幅に下方修正されるなど、目を疑うようなものだった。大幅な修正要因は建設統計のミスとの理由だったが、内閣府のデータの信頼性が失っていることで、市場も速報値の結果では反応するのは難しいかもしれない。なお、日本時間午後には6月の鉱工業生産・確報値や設備稼働率も発表される。

 円以外の通貨では引き続きオセアニア通貨の動向に注目。本日は豪州の7月雇用統計が発表されるが、豪準備銀行(RBA)は日銀とともにいまだに数少ないインフレを警戒している状況だ。5-6日に行われた豪準備銀行(RBA)理事会では、失業率に関しては上昇を予想しているが、労働市場は依然としてひっ迫しているとの見解を示した。雇用情勢が予想よりも強い結果となった場合は9月の理事会に向けて利上げ期待が高まる可能性もあり、前日利下げしたRBNZとの方向性の違いが顕著になることで豪ドル/NZドルが大きく動意づくか。


(松井)
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