東京為替見通し=ドル円、まず4月実質賃金注目 豪ドルはGDPを材料視

 4日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日銀の金融政策正常化への思惑が高まったことや4月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を下回ったことで154.55円まで続落した。ユーロ円も168.09円まで下げ幅を拡大した。ユーロドルは1.0859ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、まずは4月の実質賃金を見極めたい。その後は、米10年債利回りの低下基調や日本の10年国債利回りの上昇が見込まれることで軟調推移が予想される。

 8時30分に発表される4月毎月勤労統計では、春季労使交渉(春闘)で高い水準の賃上げ(※賃上げ率平均5.17%)が実現していることで、24カ月連続で減少していた実質賃金のマイナス幅がどの程度縮小するのかを確認することになる。2月は-1.8%、3月は-2.5%で、24カ月連続のマイナスはリーマン・ショック前後を超えて、比較可能な1991年以降の記録で過去最長を更新していた。

 4月の実質賃金のマイナス幅の度合いが、日銀金融政策決定会合での追加利上げ幅(予想:+0.15%~+0.25%)や国債買い入れの減額幅に影響すると思われる。

 昨日は、政府が近くまとめる「経済財政運営の指針(骨太方針)」で、円安による輸入物価上昇の影響に言及することが判明した。内需を支える「家計購買力への影響に注意が必要」と明記するとのことである。

 2024年1-3月期の国内総生産(GDP)ギャップは6兆円の需要不足とのことだが、定額減税(4万円x納税者=約5兆円規模)と賃上げにより、「消費マインドを喚起し、経済の好循環を実現」(岸田首相)する目論見らしい。しかし、民間調査機関の試算では、現状の円安が続いた場合、家計1世帯の負担増は約10.6万円となるとされ、電気・都市ガス代に対する激変緩和措置の補助の廃止なども、負担増となる。

 岸田首相は経済財政諮問会議で、「最近の円安の動きを十分注視しており、政府・日銀は引き続き密接に連携していく」と円安抑制を宣言していたが、財務省によるドル売り・円買い介入、日銀による金融政策正常化、骨太方針でのレパトリ減税などが円安抑制策として警戒されている。

 昨日、鈴木財務相は「引き続き為替市場の動向をしっかりと注視し、万全の対応を取っていきたい」とこれまでの見解を繰り返した。
 
 なお植田日銀総裁は昨日も「長期金利は金融市場で形成されることが基本」と述べて、長期金利水準の決定を、これまでの日銀から市場に委ねることを再確認した。一方、日銀関係者の話として、13-14日の日銀金融政策決定会合では長期国債の買い入れの減額についてより具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する可能性が大きい、と報じられた。

 10時30分に発表される1-3月期豪国内総生産(GDP)は前期比+0.2%/前年比+1.2%と予想されており、昨年10-12月期の前年比+1.5%からの悪化が見込み。先週発表された豪4月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.6%と、豪準備銀行(RBA)のインフレ目標レンジ(2-3%)から遠ざかっており、17-18日のRBA理事会では、先月同様に利上げが検討される可能性が高まっている。オーストラリアの景況感の悪化とインフレ率の上昇というスタグフレーションへの警戒感が、RBAの利下げ開始時期を先送りさせている。

(山下)
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