東京為替見通し=ドル売りの流れは変わらずか、ロシア過去最大の空爆なども注目

 昨日の海外市場でのドル円は、ポジション調整目的のドル買い戻しが優勢に。7月米耐久財受注額が予想を上回ったことや米長期金利が上昇に転じたことも円売り・ドル買いを促し、一時144.65円まで上昇した。ユーロドルは1.1150ドルまで弱含んだ。

 本日のドル円も上値の重さは変わらないか。昨日は143.45円まで下落後は買い戻しが優勢になり、小幅に反発して引けたが、ドル売りのトレンドが変わったと考えるのは難しいだろう。先週カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(通称・ジャクソンホール会合)でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は米金融政策が転換点を迎えたことを強調したが、今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票メンバーの一人でもある、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁も昨日は政策を調整する時期が来ていると同様の見解を示した。デイリー総裁は「労働市場が予想以上に弱まる場合、より積極的になる必要がある」とも発言している。昨日の米長期債利回りは小幅に上昇して引けたが、市場では9月の25ベーシスポイント(bp)の利下げ予想は変わらないが、11月には25bpと50bpの更なる利下げ予想が拮抗している。米債券市場はこれまでのような過熱感はないものの、着実に米金利が低下する予想は変わらず、今後発表される米経済指標(30日の7月米個人消費支出(PCE)、6日の8月雇用統計等)を見定めて利下げ幅を確認していくことになるだろう。

 米金利低下のドル売りは、欧州通貨や対円だけではなくアジア通貨に対しても進行していることは、ドル円の重しになる。海外投資家はアジア通貨に対して、前回7月のFOMCの結果発表まではドルロング・アジア通貨ショートにしていたものが、FOMC後のパウエルFRB議長の会見を境にドルショート・アジア通貨ロングに転じた。円だけではなくアジア通貨ショートのポートフォリオの変換が、今後もドル円の上値を抑えそうだ。
 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でのIMM通貨先物ポジションは、円ショートからロングに転じたとはいえ、ほぼスクエアに近い状態にある。本邦勢の中ではIMMがほぼスクエアになったことで、円キャリートレードの巻き戻しを期待している声もある。しかし、日米の金融政策の方向性の違いで、すぐに円キャリートレードに海外投資家が戻るとは考えにくく、むしろまだまだ今後は円を買う余地があるとの声が海外勢の中では多い。

 また、引き続き地政学リスクの動向にも目を向けておきたい。昨日ロシアがウクライナに対して過去最大となる空爆を実施している。ロシアは、長期的戦略の一つであるウクライナのエネルギーインフラへの攻撃を開始したことを認め、すべての標的が攻撃されたと発表した。ウクライナ情勢だけではなく、ヒズボラとイスラエルの応戦などもあり、地政学リスクの変化も相場に影響を与えそうだ。

 なお、本日のアジア時間では本邦の7月企業向けサービス価格指数が発表される以外は、市場を動意づける経済指標の発表は予定されていない。しかしながら、依然として流動性は悪化したままでもあり、金利や株式市場の動向次第で大きな値幅をもって動く可能性もありそうだ。


(松井)
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