東京為替見通し=ドル円、米8月CPI警戒で軟調推移か 米大統領候補の討論会に注目

 10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は142.20円まで下落した。米長期金利の低下や、ダウ平均や日経平均先物の下げが重しとなった。ユーロは対ドルで1.1015ドル、対円では156.80円まで売られた。

 本日の東京外国為替市場は、まずは10時からのハリス米副大統領とトランプ前米大統領によるテレビ討論会(90分間の予定)を見極めたい。その後ドル円は、米長期債利回りの低下や今夜発表の伸び率鈍化が予想されている米8月消費者物価指数(CPI)への警戒感から軟調な展開が予想される。

 ドル円が141円台で下げ渋っている要因としては、米国次期政権の拡張的な財政政策、すなわち金利上昇への警戒感があると思われる。本日の討論会で両者の優劣が判明した後でも、141円台ではドル円の下押し幅は限定的かもしれない。

 本日の最重要イベントは今夜発表される米8月CPIであり、7月の前年比+2.9%から+2.6%への伸び率鈍化が見込まれている。予想通りならば、タカ派のウォラーFRB理事が、先週末「経済指標で一段と大きな幅での利下げの必要性が示されれば支持する」と述べていたことで、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%の利下げの可能性が高まるため、ドル円は上値が重い展開が予想される。

 10時からの討論会では、両者の政策論争ではなく、どちらが次期大統領として相応しいのかを問われることになると思われる。ハリス候補は、「Weird」という言葉を連発して、トランプ候補を逆上させて失言を誘う計画、トランプ候補は、ハリス候補の発言を遮ることなく話をさせて議論下手を明らかにする計画ではないか、と報じられている。

 トランプ候補は、トランプ減税の恒久化と法人税率の引き下げを掲げていることで、歳出拡大や歳入減が見込まれている。さらに、中国からの輸入品に60%超の関税を課すと言及しており、関税は輸入物価の上昇を通じてインフレを加速させ、最終的に米経済の7割を占める個人消費に悪影響を及ぼす可能性がある。ウクライナ戦争は即時停戦、イスラエルには全面支援を標榜している。

 ハリス候補は、中間層への減税や法人税率の引き上げ(21%⇒28%)、住宅や食品の価格抑制、税制を使った生活支援による高インフレへの対抗策を掲げていることで、財政出動と米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを余儀なくされることになる。ウクライナへの支援継続、イスラエルの自衛権とパレスチナの国家建設を標榜している。

 ほか、本日9時20分のハンター豪準備銀行(RBA)総裁補の講演では、9月23-24日の豪準備銀行(RBA)理事会での金融政策への言及に注目することになる。また、10時30分からの中川日銀審議委員のあいさつでは、年内の日銀金融政策決定会合での追加利上げへの言及がポイントとなる。

(山下)
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