東京為替見通し=ドル高センチメントは変わらず、日銀総裁発言の軌道修正には要警戒

 先週末の海外市場でドル円は一時155.96円まで下落した。日本の政府高官から足もとの円安をけん制する発言が相次いだことや、11月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)で、変動が激しい食品とエネルギーを除くコア・デフレーターが予想を下回り、米長期金利が低下したことでドル売り戻しが進んだ。ユーロドルは、米金利の低下で1.0448ドルまで値を上げた。

 本日の東京時間のドル円は、156円台を中心にもみ合いか。

 先週は加藤財務相が「為替動向は、一方的で急激な動きがみられる」、三村財務官は「為替の動向を憂慮、行き過ぎた動きには適切に対応」「投機的な動き含めて憂慮している」と発言するなど、円安へのけん制発言が目立った。ドル円は7月に行われた介入水準には接近しているが、今回は円安という側面は多少あるものの、それ以上にドル高とも言える。7月にはユーロ円は175円台、豪ドル円は109円まで外貨高・円安が進んでおり、現在はそれぞれ163円近辺、97円台で推移するなど7月のような円独歩安の展開ではない。これ以上の円安局面ではドル売り・円買い介入が実施されるかもしれないが、米国の利下げ打ち止め感が漂う中でのドル買い優勢であり、これまでのような介入効果を期待するのは難しいだろう。

 今週は、植田日銀総裁が先週の日銀金融政策決定会合後に発言した内容に対して、修正が入るかにも警戒が必要。

 植田総裁は会見で、政策決定は「来年の春闘などの情報も必要」と述べ、据え置きによる為替相場の影響については「輸入物価の対前年比は落ち着いている」などと複数回の質疑に回答。春闘に関しては、3月前に経済団体が政府の要求通りに賃上げを示唆すれば、植田総裁がもう少し情報を得たいとした「来年の春闘に向けたモメンタムなど、今後の賃金動向」について判断することもできるとし、軌道修正する可能性もある。また、輸入物価指数についても同様に前言を市場が誤解していると修正する可能性もある。

 7月の日銀会合後での植田総裁の会見では、今後の更なる利上げを示唆し、市場が驚くほどのタカ派発言をした。しかし、翌週には内田日銀副総裁が総裁の発言を「市場が誤解していると」と否定しており、今回も繰り返されるかもしれない。7月同様に日銀幹部の発言で、再び為替市場がボラタイルな動きを繰り返す可能性があることには注意しておきたい。なお、25日に植田総裁は昨年同様に経団連で講演を行う予定。

 なお、本日以後は日本や中国以外の多くの国でクリスマス休場になる。明日24日はドイツ、スイスが休場になるほか、豪州、香港、英国など多くの国で短縮取引。25日は日本と中国以外は休場。26日は米国市場は通常に戻るが、トルコ以外の多くの欧州市場は引き続き休場。市場流動性がさらに悪化するだけではなく、先週末20日にはオプションカットの設定が様々な通貨、様々な水準に観測されたが、応当日の関係もあり今週はオプションの設定も極端に減少している。よって、これまでは支えられたり抑えられていた水準も簡単にクリアして振幅の激しくなるリスクには要注意となるだろう。

(松井)
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