東京為替見通し=米英CPI発表控え動きにくいか、日米金利上昇で綱引き相場に

 昨日の海外市場でドル円は、12月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことが分かると米長期金利の低下とともに円買い・ドル売りが先行。一時157.44円付近まで値を下げた。ただ、米長期金利が上昇に転じると158.20円まで強含んだ。ユーロドルは、米PPIの下振れを受けてユーロ買い・ドル売りが強まると、一時1.0309ドルと日通し高値を更新した。

 本日の東京時間では、5・10日(ゴトー日)ということもあり、東京仲値の値決めにかけてはドル買いが予想されるものの、本日の米英インフレ指標発表や20日のトランプ氏の大統領就任を控え、値幅を伴う動きを期待するのは難しいか。また、依然として今月末の日銀金融政策決定会合での利上げや、タカ派姿勢を示す可能性があることも円買い圧力になりそうだ。
 
 昨日の氷見野日銀副総裁の発言内容が伝わると、ドル円は荒い値動きをしたが、内容は大きくは円買い・円売りのどちらを促すようなものではなかった。ただ、賃上げに関しては春闘の結果が出るのは、まだ2カ月先になるにも関わらず「去年に比べて前向きなものが多い」と発言するなど、3月まで待たずに利上げに舵を切る可能性があることを匂わせていた。

 また、明日発表される12月企業物価指数の中で注目される輸入物価指数について、11月速報値は1.5%の上昇と10月の改定値2.9%より低下していたにも関わらず、「かなり高い伸び」「円安による輸入物価の上昇、影響をよく見ていく必要」と述べていた。輸入物価に関してのこの発言は、すでに副総裁が12月の結果を知っていることを受けて発言したものか、それとも10・11月がプラスだったことで高い伸びとしたのかが気になるところだが、輸入物価上昇や円安の流れを阻止するためにも、早期の利上げの可能性もあり、ドル円の上値を抑える要因にもなるだろう。

 昨日発表された米国の12月卸売物価指数(PPI)はヘッドライン、コア指数ともに市場予想よりも下振れた。米長期金利は一時的に低下したものの、その後は上昇に転じ4.8069%前後と2023年11月以来の高水準を記録した。米金利の上昇がドル円の一定の支えにはなるだろうが、本邦長期金利も昨日は13年9カ月ぶりの水準まで上がったことを考えると、金利面では綱引き状態となっていることで、ドル円の上げ幅は限られるだろう。

 更に、欧州各国や一部新興国が利下げに動こうとしていることもあり、欧州通貨や新興国通貨に対してのドル買いの流れの方が強い。また、欧州債も売られてはいる(利回りは上昇している)が、米国のようなインフレ低下に歯止めがかかったのではなく、財政不安による債券売りの様相が強いことで、逆に通貨安に動きやすい。その中で、本日はPPIよりも注目度が高い消費者物価指数(CPI)が英国と米国から発表されることで、この結果を見るまでは市場参加者が大きくリスクを持つのが難しく、アジア時間での値動きを抑制することになりそうだ。

 くわえて、20日に予定されているトランプ氏の大統領就任を控え、徐々に市場が様々なリスクを持ちにくくなっている。昨日もトランプ氏はSNS(TruthSocial)で就任日に海外歳入庁(External Revenue Service)を創設し、「関税、および海外からもたらされるすべての歳入を徴収する」方針を示した。現状では米債市場ではインフレ再燃による金利が上昇し、その影響で為替市場ではドル買いになっている。しかし、本日の日経新聞で山崎達雄元財務官が、トランプ氏がドル高を懸念していることを改めて述べているように、通商政策に一番力を入れているトランプ氏が就任直後にドル高についてけん制するリスクもあり、債券市場と為替市場の動きが今後は変わる可能性なども念頭に入れておく必要もありそうだ。

(松井)
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