東京為替見通し=円買いトレンド継続、本邦輸入物価指数・豪雇用統計に注目

 昨日の海外市場でドル円は、12月の米消費者物価指数(CPI)コア指数が市場予想を下回ると、一時155.95円と昨年12月19日以来の安値を付けた。米10年債利回りは指標発表前の4.76%台から4.63%台まで急低下した。ユーロドルは米CPI発表後1.0354ドルまで買われたが、その後1.0260ドルまで弱含んだ。
 
 本日の東京時間でドル円は上値が重いか。ここ最近の市場の動きをみると、米金利が上昇する局面では欧州やオセアニア通貨に対してドル買いは進むものの、円に対してのドル買いの反応は鈍かった。むしろ、米金利上昇による株売りに反応し、ドル円は上値が重くなった。逆に昨日は米金利の低下で、ドル円は下げ幅を広げたものの、米株の上昇にもかかわらずクロス円を含め上値が重くなった。米金利の動向に欧州通貨等は連れるものの円の反応が鈍く、トレンドとして円買い意欲が強いということが現時点では明確だ。

 円買い意欲が強いのは、来週に予定されている日銀金融政策決定会合での利上げ観測が高まっていることが主要因。12月の日銀会合後に発表された本邦の経済指標は、会合翌日の20日に発表された11月全国CPIコアが前年比で予想を僅かに上回り2.7%(予想2.6%)となったが、27日発表の12月東京都区部CPIは前年比で予想より下回り2.4%(予想2.5%)だった。今月9日発表の11月賃金指数は4カ月連続でマイナスになるなど、インフレの高進が確認されたわけではない。

 しかしながら、大企業を中心に賃上げを示唆する声が高まっていることで、12月の政策決定会合時ではハト派と捉えられる発言をしていた植田日銀総裁は、昨日は「金融政策、経済・物価の情勢の改善が続けば政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整」とタカ派と捉える見解を示した。このことで、早ければ来週利上げの可能性の思惑が高まっている。

 米国が利下げ停止に傾いていることで、対ドルでの円買いは限られているが、欧州通貨はディスインフレや財政不安などもあり買えず、新興国通貨もインフレ抑制や株安もあり買うことができない状況で、消去法的にも円は買われやすく、クロス円の売りも重しにドル円は軟調な動きになりそうだ。

 そういった中で本日は注目されるのが、本邦12月企業物価指数。特にこの中で明らかになる輸入物価指数を確かめることになる。輸入物価指数に関しては円安が進行していることもあり、この数年は注目度が増している。

 12月の日銀会合後の質疑応答で植田日銀総裁が、「オントラックにもかかわらず利上げをしなかったことで円安が進行したことへの評価」を記者から質問されると、「輸入物価の対前年比でみると、割と落ち着いているという状況であることも考慮に入れた」と回答。また、ほかの記者から「10月末時点と比べても3円ほど円安に振れているように、円安が物価上振れをもたらすリスクというのは10月時点と比べて高まっている」ことへの見方についても、為替の影響が日本の物価やインフレ率に影響を与えていることは認識しているとしたが、現時点では「対前年比でみた輸入物価の上昇率が落ち着いている」と2度にわたって、12月時点での円安水準については許容範囲内と捉えられる発言を繰り返した。

 くわえて、今月9日に日銀大阪支店長は「輸入物価は落ち着いている、物価加速懸念が高まっているわけではない」と発言。一方で、一昨日氷見野日銀副総裁は、輸入物価指数が11月速報値は+1.5%と10月の改定値+2.9%より低下していたにも関わらず、「かなり高い伸び」「円安による輸入物価の上昇、影響をよく見ていく必要」と述べ、植田総裁や大阪支店長と真逆の意見を述べた。副総裁の発言が今日発表される結果を既に認識してのものだったのか、それとも10・11月がプラスだったことで高い伸びとしたのかが気になるところだが、今回の発表で明らかになる。仮に輸入物価が上昇していた場合には、インフレや円安の流れを阻止するためにも、1月の利上げの可能性が更に高まり、ドル円の上値を抑える要因にもなるだろう。

 円以外では豪州の12月の雇用統計に注目。11月の豪雇用統計は失業率、新規雇用者数がともに市場予想よりも強い結果になった。しかし、昨年の12月9-10日に開催された豪準備銀行(RBA)理事会では「インフレの上振れリスクは緩和。CPIは持続的に目標に戻ると確信」とハト派的な見解が示された。12月の雇用統計で11月に続き労働市場のひっ迫が確認されれば、賃金上昇によるインフレ圧力の高まりにより、RBAのスタンスが再び変わる可能性があるかもしれない。一方で、雇用情勢が悪化した場合は、RBAの早期の利下げ予想が高まることになるだろう。

(松井)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。