東京為替見通し=円買い地合い継続、豪ドルはRBA・ユーロは米露協議と欧米の溝が焦点

 昨日の海外市場でドル円は、東京時間に発表された10-12月期実質国内総生産(GDP)速報値が好調な内容だったと受け止められた動きが継続され、一時151.34円まで弱含んだ。ユーロドルは一時1.0467ドルまで下落したが、一巡後は1.04ドル後半でもみ合いとなった。なお、米国市場はプレジデンツデーで休場だった。
 
 本日の東京時間でドル円は上値の重さが続くか。昨日発表された10-12月期実質GDP速報値は年率換算で+2.8%まで上昇し、市場予想の+1.0%を大幅に上回る結果となった。また、7-9月期も速報値の+1.2%から+1.7%へと上方修正された。24年通年の名目成長率は前年比で+2.9%、実額で609兆2887億円と過去最高を記録。賃金と物価の好循環強まっているとの判断で、3月の日銀利上げ予想の高まりや、その後の更なる利上げ期待で円が買われやすくなりそうだ。

 ただ、米国ではハーカー米フィラデルフィア連銀総裁やボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事が昨日行われた講演で、利下げ再開には慎重な姿勢を示した。米金利に対する思惑から、ドル円の下げ幅は大きく広がりにくいだろう。

 円以外の通貨でも本日はボラタイルに動く可能性がある。まずは豪ドルの値動きに注目。昨日から行われている豪準備銀行(RBA)理事会が、日本時間12時半に政策金利を発表する。1月末に公表された豪州の10-12月消費者物価指数(CPI)は前年比では+2.4%、RBAが重視する基調インフレ率(トリム平均値)はこの3年間では最低水準の+3.2%まで減速した。

 インフレ率の低下で、豪州の4大銀行全てが25ベーシスポイント(bp)利下げを予想し、政策金利は4.10%まで引き下げられる見込み。ただ、4大銀行のうちNABは今後5回の利下げで政策金利を3.10%まで引き下げるという予想だが、CBAとウェストパックは4回利下げの3.35%まで、ANZに至っては2回利下げの3.85%までという見通しだ。各行によって今後の利下げ予想幅にバラツキがある。今回の理事会で予想通りの25bp引き下げだった場合でも、声明文がタカ派になるのかハト派になるのかが、豪ドルにより重要となる。

 更にユーロの動きにも引き続き警戒が必要。ウクライナを巡り本日、ルビオ米国務長官とラブロフ露外相の協議がサウジアラビアで行われる。15日にミュンヘンで開かれた安全保障会議でウクライナとロシア担当のケロッグ米特使は、欧州の停戦交渉の参加を拒否した。この件に関してウクライナをはじめ欧州各国が懸念を表明し、昨日急遽パリで緊急首脳会議が行われた。

 歴史を振り返ると、1938年に同じミュンヘンにて話し合われたドイツのズデーテン併合問題についても、当事国だったチェコスロヴァキアが会議に招かれず国土の割譲が決定された。今回も米露が当事国のウクライナを無視し、欧州の意向も聞かずに、二国間で割譲や分割統治の話し合いがされるのではと懸念されている。また欧州各国はナチスによるオーストリア併合から宥和政策をとったことで、その後のナチスの領土拡大を進めた苦い過去を経験している。それだけに、ウクライナ問題を米露だけで交渉を進めるのを断固として反対し、欧米間の摩擦が更に強まる可能性もありそうだ。

(松井)
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