東京為替見通し=ドル円、明日開催の日米貿易交渉への警戒感が上値を抑える展開か

 15日海外の外国為替市場でドル円は、日米貿易交渉前のポジション調整で142.60円まで下落後、対ユーロでのドル買いで143.28円付近まで持ち直した。ユーロドルは、4月独ZEW景況感指数やユーロ圏ZEW景況感指数の大幅悪化や「米国と欧州連合(EU)の関税を巡る交渉はほとんど進展していない」との報道で1.1264ドルまで値を下げた。ユーロ円も161.30円と日通し安値を更新した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、明日開催予定の日米貿易交渉への警戒感が上値を抑える展開を予想。また引き続き、トランプ関税関連の報道には注意していくことになる。日本時間7時頃には、トランプ米大統領が「重要鉱物を巡る調査を開始する行政措置」に署名したことが報じられた。

 トランプ米政権による関税強化はこれまで市場を混乱させてきたが、最近は政権自体の混乱を招いている。米国企業は米国内での生産を「高コスト・低効率」と認識しており、トリプル安(ドル安・株安・債券安)というドル離れの様相を呈し始めた。これを受けて相互関税発動は90日間停止、電子機器などは分野別の「半導体関税」へ分離、自動車関税などの緩和の可能性、などの迷走が続いている。

 トランプ米大統領は、「中国などに依存せず米国で製品を作る必要がある」と訴えてきた。しかし、かつてスティーブ・ジョブズ氏がオバマ第44代米大統領に「米国でのアップル製品の製造は不可能であり、中国でしか製造できない」と述べていたように、米国の製造業は、20世紀で時間が止まっているのかもしれない。

 明日の日米貿易交渉では、ベッセント米財務長官が「関税、非関税障壁、補助金、そして『為替問題』など」の協議を示唆している。ミランCEA委員長の論文のシナリオに従うと、対日相互関税24%や自動車関税25%を撤回する代わりに、非関税障壁(※車検制度など)や補助金(※輸出還付金など)の撤廃が米側から要求されそうだ。また、防衛費の増額(※安全保障政策を連携させた「保護レント理論」)、ドル安・円高を受け入れるというバーターも想定される。

 ただし為替問題を担当する加藤財務相は、来週のG20財務相・中央銀行総裁会議やIMF・世銀総会などで、日米財務相会談に臨む意向を示した。そのため、赤沢経済再生相とベッセント米財務長官やグリアUSTR代表との交渉では、為替問題は米サイドから言及のみで終わるかもしれない。

 本日11時には中国の1-3月期国内総生産(GDP、予想:前期比+1.4%/前年同期比+5.1%)、3月鉱工業生産(予想:前年比+5.8%)、同月小売売上高(予想:前年比+4.2%)などが発表予定。もっとも米中貿易戦争が本格化する前の数字なので、ネガティブサプライズの場合にのみ警戒しておきたい。

 なおアトランタ連銀の予測モデル「GDPナウ」では、米国の1-3月期GDPはマイナス2.4%(※4月9日時点)と予想されている。米中貿易戦争に向けて明暗が分かれている。

(山下)
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