東京為替見通し=多数のドル売り・円買い要因で上値は重い、欧州はイースター休場

 先週末の海外市場でドル円は一時142.12円まで売られた。もっとも聖金曜日の祝日(グッドフライデー)で欧州やカナダが休場、米国も株式・債券・商品市場が休場だったことから商いは低調だった。ユーロドルは、1.1398ドルまで上昇した。

 本日の東京時間でのドル円も、様々なドル売り・円買い要因が多いことで上値は抑えられるだろう。早朝のオセアニア市場で、すでにドル円は先週末の安値を割り込み、ユーロドルも高値を上抜けた。ただ、日米を除いた多くの市場がイースターマンデーで引き続き休場のため、流動性が悪いことが想定される。もしドルの買い戻しが入った場合、値幅を伴うリスクはありそうだ。

 ドル売り要因としては、依然としてトランプ関税が米国のリセッション懸念を高め、トリプル安を再び引き起こす可能性。先週はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が関税による米景気停滞懸念を表明した。20日にも今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を有するグールズビー米シカゴ連銀総裁が、現時点は企業や消費者が関税導入前の価格で高額商品を「先取り購入(買いだめ)している」ことが、今夏の経済活動の落ち込みにつながる可能性を示唆している。

 またホワイトハウスの経済顧問ケビン・ハセット氏が先週末にかけて、トランプ米大統領とそのチームがFRB議長の解任を検討していると述べた。トランプ政権の暴走がFRB議長解任にまで及びそうなことも、ドルの信認を揺るがせている。パウエル議長は、法律上解任は不可能であり、2026年5月の任期満了まで議長職を務める意向であると表明。しかしながらハセット氏は、政権はパウエル議長の解任を可能にする「新たな法的分析」があるかどうかを検討すると言及した。

 ところで日本については、日銀も厳密にいえば政治から独立性はなく、日銀法第4条で「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と定められている。

 ドル売りだけではなく、円買い圧力も依然として強い。先週行われた日米関税協議は、米国側がトランプ米大統領を含めた米政権中枢の要人が出席した。一方で日本側は、赤沢経済再生相本人自らが述べているように「格下の格下」との交渉では、合意に至るような結果が出るわけがなく、予想通りに結論は持ち越された。

 石破首相は「前進が得られるよう検討加速」と悠長な発言をしているが、イタリアが国のトップのメローニ首相が17日に会談を行ったように、多くの国は関税交渉を早急にまとめるよう努めている。日本がこれまでのように、のらりくらりと時間をかける交渉姿勢を続けると、「大きな進展」と発言したトランプ大統領が得意の手のひら返しで、日本が避けられないほどの圧力を加えてくるリスクがありそうだ。

 2回目の日米通商協議については、今月中に行われるとの話が出ている。ただし、まずは4月21日から26日にワシントンDCで行われる国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会の春季会合で訪米する加藤財務相とベッセント米財務長官の協議が次の注目点になりそうだ。加藤氏は22日に訪米し、米国時間の24日に財務長官と会談を行い為替についても話し合われる予定。本日の日経電子版でも「円は日米交渉の焦点に」と報じるなど、ドル高・円安調整による貿易不均衡是正の可能性が高いことも円買い圧力になる。

 なお、商品先物取引委員会(CFTC)いわゆるシカゴIMM筋が先週発表した主要な円先物のポジション状況では、円ロングが再び拡大した。一部の市場関係者からは、積みあがった円ロング解消を期待している声がこの数カ月出ていたが、むしろポジションが増え、しかも持ち値レートが有利になっている。

 逆に、巻き戻しを期待してドル売り・円買いの流れに乗れていない一部投資家や、147円台の想定為替レート(3月の日銀短観で2025年度の「全規模・全産業は上期147.17円、下期146.95円、通期147.06円」、大企業製造業は「上期147.43円、下期147.28円、通期は147.35円」)から離れてしまった本邦企業もドル売りのチャンスを逃したままだ。仮にシカゴIMMの買い戻しが入った場合でも、利食いのためで慌てる様相はなく、むしろ売り遅れている本邦勢のドル売りが頭を抑えることにもなりそうだ。

(松井)
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