東京為替見通し=ベッセント発言がドルの重しになるか、カナダ総選挙の結果にも注目

 昨日の海外市場でドル円は、一時は4.29%台まで上昇した米10年債利回りが4.20%台まで低下したことがドル売りを促し、前週末の安値142.59円を下抜けて一時141.99円まで値を下げた。4月米ダラス連銀製造業景況感指数が▲35.8と前月の▲16.3から大幅に悪化し、2020年5月以来の低水準を記録したこともドル売り要因。ユーロドルは、1.1425ドルまで上値を伸ばした。

 本日のアジア時間でドル円は、東京市場が昭和の日で休場ということもあり大きなトレンドを作るのは難しいだろうが、欧米時間で続いたドル売りの流れは変わらないか。ただ、二転三転とするトランプ米大統領の発言などで、相場が急転するリスクには常に注意をしておきたい。

 米トリプル安の影響もあり、ハネムーン期間(大統領就任100日間)が終了したトランプ政権の支持率は下落している。ワシントン・ポスト、ABCニュース、イプソスが共同で行った世論調査では、米国成人の39%まで支持率は低下。他の支持率もCNN/SSRSの世論調査では米国成人の41%、NBCニュースのステイ・チューンド世論調査では米国成人の45%になるなど、70年以上ぶりの低水準となっている。支持率が下落基調をたどる中で、ベッセント米財務長官をはじめ、政権中枢要人がトリプル安を避けるように進言しているとのうわさもあり、関税圧力の緩和期待がドル買い・円売りの要因になる。

 ただ、昨日ベッセント氏の2つの発言はドルの重しになりそうだ。1つ目は「貿易摩擦の緩和は中国次第だ」と発言したこと。中国政府は兼ねてから米国が圧力をかけている限りは交渉にも応じない姿勢を示していることで、米国が中国に対しての歩み寄りをみせない限りは両国間の交渉は前に進まないだろう。すでに中国は欧州連合(EU)、BRICS諸国などとの通商交渉を順調に進めるなど、関税問題に関して米国ほど焦りはない。先週に入り、あたかも中国が交渉に前向き姿勢を示したような発言をしていたトランプ米大統領だが、交渉に進展がないことが判明した場合は、先週のリスク回避の動きのメッキがすべてはげ落ちるリスクには警戒したい。

 2つ目は、ベッセント氏が「欧州中央銀行(ECB)は、ユーロを下落させるために利下げを行うだろう」と昨日発言したこと。G7各国で金融政策を通貨政策に結び付けようとしている国はないと思われているが、トランプ政権は米国以外の国の低金利政策は、自国通貨安・ドル高に結び付けているとの認識を持っているようだ。この件に関しては低金利政策を長期間続けている日本に対しても当てはまる。明日から始まる日銀政策決定会合では、据え置き予想が多数を占めているが、先週の訪米時に植田日銀総裁や政府要人に、日本の低金利政策に対して米国が圧力をかけた可能性もある。表面上は「強いドル政策を堅持している」とのトランプ政権だが、前述のECBへの発言を含めドル高を危惧していることは明らかなことで、ドルの重しになるだろう。

 なお、本日はカナダドルの値動きには要警戒となる。カナダの総選挙の投票が、日本時間10時半前後に終了する予定。その後の投票の結果次第で、カナダドルが動意づくことが予想される。


(松井)
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