東京為替見通し=ドル円、米10年債利回りの低下で上値が重い展開か

 21日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)理事会で、政策金利を0.50%引き上げることが決定されたことで1.0278ドルまで上昇後、1.0154ドルまで反落した。ドル円は、米10年債利回りが一時2.86%台まで急低下したことで、欧州序盤の高値138.88円から137.30円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、本邦の6月消費者物価指数を見極めた後は、26-27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅が1.00%ではなく0.75%となる可能性が高まっていることや米10年債利回りの低下で上値が重い展開が予想される。

 昨日の日銀金融政策決定会合では、予想通りに大規模金融緩和政策の維持が決定された。
 経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2022年度の消費者物価指数(CPI、除く生鮮食品)見通しを+2.3%(4月は+1.9%)、23年度を+1.4%(4月は+1.1%)、24年度を+1.3%(4月は+1.1%)と引き上げられた。また、リスク要因として、金融・為替市場の動向が挙げられた。黒田日銀総裁は会見で、利上げを強く否定し、少しの利上げでは円安は止まらない、と述べ、円安基調を黙認した。

 日本の6月のコア消費者物価指数は前年比+2.2%と予想され、5月の前年比+2.1%からの若干の上昇が見込まれている。6月の輸入物価指数は、前年比+46.3%の上昇を記録し、比較可能な1981年以降で最大の伸びとなった。上昇率に占める円安要因の割合は、3月の2割台、4月の3割台から5月は4割を超えている。輸入物価の更なる上昇は、世論の批判の強まりを通じて、日銀に対する岸田政権の圧力が高まる可能性があるものの、岸田政権は、参議院選挙での大勝を受けて円安への警戒感をトーンダウンさせている。
 また、円安基調を支えている6月の貿易赤字は、1兆3838億円となり、輸入金額は単月で初めて10兆円の大台を記録し、上半期の貿易赤字は過去最大の7兆9240億円を記録した。ウクライナでの戦争の影響を受けた穀物、原油、天然ガスの価格が上昇している限り、食料とエネルギー自給率が低い日本の輸入は増え続けることで、ドル高・円安トレンドは継続していくことになる。
 そして、今月末が期限となっているロシア・サハリン(樺太)沖の液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン2」への再申請の結果次第では、天然ガスの調達に支障を来す可能性があることで、エネルギー供給危機の可能性にも警戒しておきたい。

 現時点での主要国の政策金利とインフレ率は以下の通りとなっている。
        【政策金利】【次回利上げ予想】【インフレ率】(▲マイナス)
・米連邦準備理事会:1.50-75% (+0.75%・+1.00%)  +9.1%(6月)
・欧州中央銀行: 0.50%   (+0.25%) +8.6%(6月)(※中銀預金金利0%)
・イングランド銀行:1.25%  (+0.50%)   +9.4%(6月)
・カナダ銀行:   2.50%  (+0.50%)   +8.1%(6月)
・NZ準備銀行:    2.50%  (+0.50%)   +7.3%(第2四半期)
・豪準備銀行:   1.35%  (+0.50%)   +5.1%(第1四半期)
・日本銀行:    ▲0.10% (据え置き)  +2.1%(5月)
・スイス国立銀行:  ▲0.25%             +3.4%(6月)


(山下)
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