ロンドン為替見通し=ユーロドル、欧州の天然ガス価格動向に要注目か

 本日のロンドン為替市場のユーロドルは、ロシアによる天然ガス供給削減を受けた欧州の天然ガス価格動向に注目する展開が予想される。

 昨日は、露国営ガスプロムが「ノルドストリーム1」のタービンを停止し、ガス供給量を減少させると発表したことで、欧州の天然ガス価格の指標となるオランダTTF天然ガス先物が10%超の大幅高となった。ガスプロムは、モスクワ時間の27日午前7時から、1日あたりの供給量を現行の半分にあたる3300万立方メートルにまで減らす、と通告している。
 欧州連合(EU)は、21日に、ウクライナに侵攻しているロシアへの経済制裁第7弾を発動しており、今回の天然ガス供給削減は、ロシアによる報復措置となる。
 ロシアによる天然ガス供給の削減により、欧州はエネルギー危機に陥る可能性が高まることで、スタグフレーション、リセッション(景気後退)への警戒感から、ユーロ売り要因となる。
 独IFO経済研究所は、エネルギー価格高騰や、今後予想されるガス不足でドイツがリセッション(景気後退)入りする可能性が高まったとの見方を示している。

 先週の欧州中央銀行(ECB)理事会では0.50%の大幅利上げが決定された。しかしながら、ウクライナでの戦争を受けた地政学リスクやエネルギー危機への警戒感が高まる中での利上げ断行は、過去の2度の7月の利上げ失敗を想起せており、予断を許さない状況が続くことになる。
 ECBは、2011年7月に政策金利を+0.25%(1.25%⇒1.50%)引き上げたが、欧州のソブリン債危機が猛威を振るい始めていたことで、11月に利下げに転じた。
 2008年7月にも+0.25%(4.00%⇒4.25%)引き上げたが、世界金融危機により金融システムが機能不全に陥り、10月に利下げに転じた。
 もし、今回の利上げが過去2回の失敗のように短期的に終われば、利上げによるユーロ売りと欧州中央銀行(ECB)への信頼感の喪失による売り圧力により、ユーロ売りに拍車がかかることになる。

 さらに、9月に予定されているイタリアの総選挙で、ユーロやEUに懐疑的なポピュリスト政権が誕生した場合、イタリアのユーロ圏、欧州連合(EU)離脱というユーロ売り要因が加わることになる。

想定レンジ上限
・ユーロドルの上値目処(めど)は、一目・基準線の1.0284ドル、ユーロ円は一目・基準線の140.58円。

想定レンジ下限
・ユーロドルの下値目処(めど)は、一目・転換線の1.0115ドル、ユーロ円は一目・雲の下限の138.46円。

(山下)
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