ロンドン為替見通し=8月欧仏独英製造業PMI改定値とスイスインフレ率に要注目か

 本日のロンドン為替市場のユーロドルは、天然ガス価格動向を注視しながら、ユーロ圏、ドイツ、フランスの8月の製造業PMI改定値を見極めていく展開が予想される。

 ユーロ圏の8月のインフレ率が過去最高の前年比+9.1%まで上昇し、天然ガス価格も上昇基調にあることで、8月の製造業PMI改定値の下方修正に要警戒か。
 ポンドドルも、インフレ高進と景気減速への警戒感が高まる中、8月英製造業PMI改定値の下方修正に要警戒となる。
 8月スイス消費者物価指数(CPI)は、前月比+0.2%と予想されており、9月22日のスイス国立銀行(SNB)金融政策決定理事会に向けて、追加利上げの可能性を見極めることになる。

 ユーロ圏の8月のインフレ率が過去最高を記録したことで、8日の欧州中央銀行(ECB)理事会での0.75%の利上げ観測が高まっている。しかしながら、ユーロ圏の物価上昇と景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感から、ユーロの上値は限定的だと思われる。また、3日まで先延ばしされたノルド・ストリーム1の点検による天然ガス供給停止に関して、4日以降に天然ガスの供給が再開されるのか否か、供給量はどの程度になるのか、が注目されている。ロシアは今年6、7月の2カ月間で段階的に合計80%の供給削減を実施してきている。

 ロシア国営ガス大手ガスプロムは8月30日、フランスのエネルギー大手エンジーに対し、天然ガスの供給を9月1日から停止すると通告しており、同様の措置がドイツに打ち出された場合、欧州はエネルギー危機に陥ることになり、ECBは利上げではなく、利下げを余儀なくされる可能性が高まることになる。
 明日2日に、主要7カ国(G7)財務相会合が開催され、米政権が提示したロシア産原油の取引価格に上限を設定する案について討議する予定となっている。もし、ロシア政府の収入源に打撃を与える上限設定案が打ち出された場合、ロシアの反発は必至であり、ノルド・ストリーム1による天然ガス供給が遮断される可能性が高まることになる。  

 ECBは、2008年7月に+0.25%の利上げを行ったが、世界金融危機により金融システムが機能不全に陥り、10月に利下げに転じた。2011年7月にも+0.25%の利上げを行ったが、欧州のソブリン債危機により、11月に利下げに転じた。
 今年7月の利上げも、欧州のエネルギー危機により、秋の利下げの可能性に要警戒か。

想定レンジ上限
・ユーロドルの上値目処(めど)は、一目・基準線の1.0135ドル、ユーロ円は7月22日の高値の140.69円。ポンドドルは、一目・転換線の1.1751ドル、ポンド円は一目・基準線の162.78円。

想定レンジ下限
・ユーロドルの下値目処(めど)は、8月31日の安値の0.9972ドル、ユーロ円は8月30日の安値の138.26円。ポンドドルは節目の1.1500ドル、ポンド円は200日移動平均線の159.27円。


(山下)
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