週間為替展望(ドル/ユーロ)-米国8月インフレ率に注目

◆ドル円、米国8月消費者物価指数に注目
◆米8月小売売上高や9月ミシガン大学消費者信頼感指数にも注意
◆ユーロドル、独9月ZEW景況指数や天然ガス価格に注目

予想レンジ
ドル円   141.00-146.00円
ユーロドル 0.9800-1.0200ドル 

9月12日週の展望
 ドル円は、8月消費者物価指数により、20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅(0.50%または0.75%)を見極めていく展開が予想されるが、パウエルFRB議長が高金利の長期化を示唆していることで、底堅い展開が予想される。

 ドル円は1998年8月の高値147.66円に向けた上昇トレンドが継続しており、1998年4月の131円台での本邦通貨当局による過去最大の円買い介入、そして6月の142円台での日米協調のドル売り・円買い介入の再現が警戒されている。しかし、6月の三者会合(日銀・財務省・金融庁)での円安「憂慮」声明に対して、米国財務省は為替報告書で介入を牽制し、先週の松野官房長官の「憂慮」発言に対しても、ドル高によるインフレ抑制を目論んでいる米財務省は否定的な見解を示していることから、円買い介入の可能性は低下している。
 
 8日の三者会合では、神田財務官が「最近の円安進行は明らかに過度な変動であり、政府・日銀は極めて憂慮しており、あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」と述べた。しかし、円安の要因である日銀の大規模金融緩和が維持される中で効果的な円安阻止の手段は限られるとの見方から、これまでのところ目立った円安抑制とはなっていない。

 米国では、8月消費者物価指数が前年比+8.1%と予想されており、6月の+9.1%をピークに、7月の+8.5%からの鈍化が見込まれている。7日に公表された地区連銀経済報告では、物価の伸びについては「鈍化の兆候が見られる」と指摘している。しかしながら、仮に米国のインフレ率の鈍化傾向が確認され、20-21日のFOMCでの利上げ幅が0.50%に留まった場合でも、パウエルFRB議長が高金利の長期化を示唆していることもあり、ドル円の下値は限定的となりそうだ。また、米国8月の小売売上高では、物価上昇による消費動向を見極め、9月のミシガン大学消費者信頼感指数では、消費者のインフレ期待の数字に注目したい。

 ユーロドルは、ロシア国営ガス会社ガスプロムが、欧州向け天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム1」の稼働を停止していることを受けた、ドイツの9月ZEW景況指数への悪影響に注目。プーチン露大統領は「タービンがあれば明日にも供給を再開する」などと述べているが、「ロシア産の石油とガスに上限価格を設定する国には原油、天然ガスを供給しない」とも述べている。来週も欧州のエネルギー対策とロシア側のエネルギー戦略のせめぎ合いに注意していくことになる。

9月5日週の回顧
 ドル円は、米10年債利回りが3.36%台まで上昇したことで、ノックアウト(143.00円~145.00円)への買い仕掛けにより、140.01円から144.99円まで上昇した。しかし、円安を憂慮する本邦通貨当局の円安対応策への警戒感から142円台まで反落した。ユーロドルは、0.9864ドルと年初来安値を更新後、ECB理事会で0.75%の追加利上げが決定され、今後数回の追加利上げが示唆されると1.0084ドルまで上昇したものの、ラガルドECB総裁が大幅利上げ継続に否定的な発言をしたことで伸び悩んだ。ユーロ円は138.69円から144.72円まで上昇後、143円台に反落した。(了)
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