東京為替見通し=本邦8月輸入物価指数を見極め、今夜の米8月CPIを待つ展開か

 12日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、アジア時間の高値143.50円から142.16円付近まで下押しした後、米10年債利回りが3.37%台まで上昇したことで142.80円台まで反発した。ユーロドルは欧州序盤に1.0198ドルまで上昇したものの、米長期金利の上昇を受けて1.01ドル前半まで伸び悩む展開となった。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の8月の輸入物価指数を見極めた後は、今夜発表される米8月消費者物価指数を控えて動きづらい展開が予想される。

 8時50分に発表される8月企業物価指数は、前月比+0.4%/前年比+8.9%と予想されており、7月の前月比から横ばい、前年比+8.6%からは上昇が見込まれている。注目ポイントは、輸入物価指数が7月の前年比+48.0%から、円安によりどの程度上昇しているのか。7月輸入物価指数(前年比)の上昇分の22.6%は円安によるものであった。

 21時30分に発表される米8月消費者物価指数は、前月比-0.1%、前年比+8.1%と予想されており、6月の前年比+9.1%をピークにして、7月の前年比+8.5%からの低下傾向の継続が見込まれている。しかしながら、パウエルFRB議長がインフレ抑制に向けて、高金利政策の長期化を示唆していることで、8月のインフレ率が予想通りに低下しても、20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%利上げ見通しには変わりないと思われる。

 ちなみに、クリーブランド連銀が推計している「CPIナウ」では、前年比+8.24%と予想されている。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月20-21日のFOMCでの0.50%の利上げ確率は8%、0.75%の利上げ確率は92%まで上昇した。

 ドル円が1998年8月の高値147.66円を射程に捉えていることで、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が高まりつつある。本邦通貨当局による円相場への牽制発言をまとめてみたが、上位が介入実施の可能性が高い表現となっている。

1)行き過ぎた投機的な相場の動きに対しては、あらゆる措置を「排除」しない。「断固」たる措置を取る用意がある。
2)投機的な動きに「憂慮」しており容認できない。必要であれば適切な措置を講じる
3)相場は経済のファンダメンタルズを反映していない
4)急激な相場変動は望ましくない。警戒感を持って市場動向を「注視」する

 先週開催された三者会合(財務省・金融庁・日銀)後の神田財務官発言「最近の円安進行は明らかに過度な変動であり、政府・日銀は極めて憂慮している。あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」は1)に近いことで、要警戒かもしれない。


(山下)
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