東京為替見通し=ドル円、本邦通貨当局とFRBの「断固」の攻防を見極める展開

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、9月米ISM非製造業指数が56.7と予想の56.0を上回り、米長期金利の上昇とともに144.85円まで上値を伸ばした。ユーロドルは0.9835ドルまで下落した。ユーロ円は一時142.44円まで下落後、142.99円付近まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円も、145円台に設定されていると思われる「神田シーリング」を巡り、FRBの「断固たる」利上げ継続姿勢を受けたドル買いと、本邦通貨当局の「断固たる」円安抑制姿勢との攻防を見極めることになる。ただ米10年債利回りが3.7%台を回復するなど米金利が再び上昇基調を強めており、基本的なドルの下値の堅さは継続されそうだ。

 最近のドル円の高値は、10月5日が144.85円、10月4日が144.93円、3日は145.30円、9月30日は144.81円までで、145円台での本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が上値を抑える展開が続いている。

 ドル円のテクニカル分析では、9月22日の高値145.90円と安値140.36円を軸にした「ダイヤモンド・フォーメーション」を形成しつつあり、天井圏での反落の可能性を示唆。さらに、価格は上昇基調だが、オシレーター系指標が低下基調という「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)」も反落の可能性も出てきた。

 本邦通貨当局の介入スタンスは、基本的には実需の円売りや円買いを相殺する介入となっている。すなわち、9月22日の円買い介入金額2兆8382億円は、8月の日本の貿易赤字2兆8172億円という実需の円売りを相殺。実需の円売りには、本邦機関投資家の外貨建て証券投資もあるため、本日発表される対外証券売買契約にも注目しておきたい。

 昨日は、財務省の松本為替市場課長が、為替介入の資金に限界はなく、今後も過度な変動に対して必要な対応が可能だとの認識を示した。松本氏は、8月末時点の外貨準備180兆円台に対して今回の介入額は2.8兆円であり、「特段、介入資金に限界があるとは認識していない。日本の外貨準備は為替介入に備えて流動性に最大限配慮した運用を行っている」と述べた。

 鈴木財務相や神田財務官が「断固たる措置」を示していることで、145円台での本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感は残されている。

 一方、パウエルFRB議長は、9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFF金利誘導目標を0.75%引き上げた後、「我々は、最後までやり遂げなければならない」と表明している。そして、昨日は、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁が、米連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制に向け、断固として(resolute)利上げを継続するという認識を示した。

 9月FOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)では、年末のFF金利の予想中央値は4.4%だった。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、11月のFOMCでの0.50%の利上げ確率は34.6%、0.75%の利上げ確率は65.4%となっており、明日発表の米9月雇用統計での変化を見極めることになる。

(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。