東京為替見通し=ドル円、本邦通貨当局のドル売り・円買い介入に要警戒か

 10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、9月米雇用統計を受けて米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを続けるとの見方やウクライナ情勢激化への懸念からリスク・オフのドル買いも優勢となり、145.80円まで上昇した。ユーロドルは0.9745ドル付近から0.9685ドル付近まで軟調推移。ポンドドルは英国債市場が再び不安定化することへの警戒感から1.1020ドルまで軟調に推移した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、9月22日の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入前の高値145.90円に接近していることで、円買い介入第2弾の水準やタイミングを探る展開が予想される。

 ドル円は、米9月雇用統計を受けて11月1-2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのFF金利誘導目標の0.75%の追加利上げ確率が78%程度まで上昇していること、そして、ウクライナ情勢の緊迫化を受けたリスクオフのドル買いで、9月22日の高値145.90円に迫っている。
 9月22日の本邦通貨当局による過去最大規模(2兆8382億円)のドル売り・円買い介入により、145.90円付近に「神田シーリング」が設定されているのか否かを探りつつ、ドル売り介入第2弾の水準とタイミングを見極めることになる。

 本邦通貨当局の介入スタンスは、実需の円売りや円買いを相殺する介入となっている。すなわち、9月22日の円買い介入金額2兆8382億円は、8月の日本の貿易赤字2兆8172億円という実需の円売りを相殺している。そして、過去の介入が1度だけで終わったことはなかったことで、ドル売り・円買い介入第2弾の可能性は限りなく高いと思われる。
 ドル売り・円買い介入第1弾の原資は、外貨預金の取り崩しではなく、米国債を売却したものであり、米国財務省も「日本の行動を理解している」として、容認する姿勢を示していた。
 財務省の松本為替市場課長は、為替介入の資金に限界はなく、今後も過度な変動に対して必要な対応が可能だとの認識を示している。松本氏は、8月末時点の外貨準備180兆円台に対して今回の介入額は2.8兆円であり、「特段、介入資金に限界があるとは認識していない」と述べている。

 イエレン米財務長官は、米連邦準備理事会(FRB)による政策金利引き上げなどを背景にドル高が進んでいることに対して「為替変動がもたらす潜在的な影響に留意している」と述べている。「市場で決まる為替レート」を支持するとしつつ、途上国や新興国からの資金流出につながる過度なドル高への懸念を示唆した。
 ドル高に対する懸念材料としては、12-13日にワシントンで開催されるG-20財務相・中央銀行総裁会議で、ドル高により輸入価格が上昇し、ドル建て債務の膨張で金融危機の可能性が高まりつつある新興国からのドル高是正の声を、イエレン米財務長官とパウエルFRB議長が受け入れる可能性となる。2008年のノーベル経済学賞、ポール・クルーグマン教授は、ドル独歩高による新興国や世界経済への弊害を指摘しており、米国多国籍企業の収益にも悪影響を与えることから、11月の中間選挙に向けて警戒しておきたい。


(山下)
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