東京為替見通し=ドル円はNY市場の上昇基調で底堅いも、債券市場はハト派で上値抑えるか

 15日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化が改めて意識されたことで138.17円まで上昇した。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)の金融引き締めに積極的なタカ派姿勢を受けて、1.0735ドルまで上昇した後、1.0593ドルまで反落した。ユーロ円は146.73円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、欧米市場での上昇基調を受けて底堅い展開が予想される。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明は、0.50%の第7次追加利上げが決定され、ドット・プロット(金利予測分布図)で2023年末の予想中央値、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が5.10%(FF金利誘導目標5.00-25%)が示されたことでタカ派だった。そしてパウエルFRB議長の記者会見では、「我々にはまだやるべきことがある。今回の決定後も政策スタンスはまだ十分に抑制的ではない」と述べ、インフレ退治のための利上げ継続の必要性を強調したことでタカ派だった。しかし、「十分抑制的な金利水準に近づきつつある」とのハト派発言を受けて、米長期金利は低下し、ドル円は134.81円付近まで下落していた。

 しかしながら、昨日のドル円は、東京市場では、135円台でのドルコールオプションの購入が下値を支え、欧米市場では、パウエルFRB議長のタカ派発言を材料にして138.17円まで反発している。そしてダウ平均も、14日は142.29ドルの下落に過ぎなかったものの、昨日は764.13ドルの下落となっている。一方で、米10年債利回りは、14日には3.47%で引けて13日の3.477%から低下、昨日も3.426%まで低下して3.446%で引けている。
 すなわち、株式市場と為替市場は、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢を警戒しているものの、債券市場は、タカ派姿勢の継続を信じていないことになる。米債利回りが低下傾向であることが、ドル円の上値を抑えることになるか。

 昨日発表された日本の11月貿易赤字は、2兆274億円となり、11月としては比較可能な1979年以降で最大の赤字となった。今年1月から11月までの貿易赤字は18兆5124億円となり、年間ベースでは20兆円を超すペースとなっており、今年の円安を支える要因となっている。本邦通貨当局は9月と10月に9兆1881億円のドル売り・円買い介入で円安を抑えてきているが、これまでの差額分9兆3243億円にプラスして、12月の貿易赤字を相殺する円買い介入を続けていく必要があるため、今後もドル円の反発局面でのステルス介入(覆面介入)には警戒しておきたい。本邦通貨当局は、ドル高・円安局面でのボラティリティーを抑制する介入を行ってきており、9月と10月の介入は、ボリンジャー・バンドの+2シグマ付近で断行されている。現状の+2シグマは142円付近にあるため、まだ遠いものの、12月は米国企業のレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)でドル高となる傾向があるため、+2シグマへの接近時には警戒しておきたい。


(山下)
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