週間為替展望(豪ドル/ZAR)-ランド、政治リスクが重し

◆豪ドル、議事要旨で再利上げの可能性巡る議論に注目
◆豪ドル、米PCEコアデフレーターやコロナ規制緩和の中国情勢にも注意
◆ランド、ANC党首選挙の投票結果に注目

予想レンジ
豪ドル円 90.00-95.00円
南ア・ランド円 7.50-8.10円

12月19日週の展望
 豪ドルは不安定な相場展開になりそうだ。今週は米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、英中銀(BOE)、スイス中銀(SNB)ほか、多数の国で政策決定会合が行われたが、来週は大きなイベントも少なくなる。クリスマスや年末を控え、市場流動性が極端に減少することから、どの通貨も方向感なく乱高下する可能性が高まる。

 豪州からは20日に豪準備銀行(RBA)の議事要旨、21日に11月ウェストパック景気先行指数が発表される。豪ドルを動意づける可能性としては、RBA議事要旨で声明文以上の内容が公表された場合だろう。6日に行われた理事会での声明文では、「あらかじめ方向性が決まっているわけではない」としたものの、「今後一定期間、さらに利上げを行うことを想定」と、再利上げの可能性を示した。一部では「6日の3.10%までの利上げで打ち止めになるのではないか」との憶測もあっただけに、市場ではタカ派寄りと捉えられた。再利上げの可能性を巡る議論の詳細を見極めることになる。

 国外イベントでは米国を中心とした株式市場や債券市場の動きに翻弄される展開となりそうだ。特に、23日にはFRBが最も重要視しているインフレ指標の11月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが発表される。また、コロナ規制を大幅に緩和した中国経済の動向にも目を配りたい。豪ドルはリスク選好・回避への動きに敏感に反応することから、流動性の悪い中での動きに注意。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が重そうだ。16日から行われるアフリカ民族会議(ANC)全国党大会が20日に終了する。20日の党首選挙では、依然としてラマポーザ大統領の再選が有力だが、獲得票数などにも注意深く目を通したい。野党は大統領の弾劾を諦めておらず、ANC内部の大統領支持票が減少した場合は、政権基盤が一気に弱まる可能性も出てくる。その場合はZARの重しになるだろう。また、バイデン米政権が「南アの通商政策が他の国と比較し、米国の輸出業者に不利な立場にある」との懸念を表明したことで、米国から一般特恵関税制度(GSP)の優遇策を外される可能性が出てきていることも懸念材料となる。なお、来週は南アからは主だった経済指標の発表は予定されていない。

12月12日週の回顧
 豪ドルは行って来い。米CPIが市場予想を下回る結果が出ると、対ドルでは9月上旬以来となる0.69ドル手前まで上昇。対円でも93円台前半までじり高となった。しかし、株安によるリスク回避の動きで上値が抑えられた。なお、注目の11月雇用統計は失業率が予想通り、新規雇用は予想を上回ったが、常勤雇用が減少したことで反応は限られた。

 ZARは小高く推移した。13日に国会で行われたラマポーザ大統領の弾劾投票は反対214票、賛成148票、棄権2票という結果になり否決された。ラマポーザの反腐敗のイメージと再選キャンペーンを傷つけたが、党の政治的存続を保証できる実行可能な代替候補者がANCにはいないということが買い要因になった。(了)
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