東京為替見通し=ドル円、閑散取引の中で日銀ピボットへの警戒感から軟調推移か

 30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、「日銀は1月17-18日の金融政策決定会合で、物価見通しの上方修正を検討。政府・日銀が目標とする2%に近い水準で物価が高止まりすることになり、緩和修正への圧力がさらに増す可能性がある」との日経記事を受けて、一時130.78円まで下落した。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)による大幅利上げ継続への警戒感やロンドン・フィキシングでのドル売りへの思惑などから1.0713ドルまで上昇した。ユーロ円は140.00円まで下落した。

 本日のアジア外国為替市場のドル円は、東京市場が正月三が日で休場であり、ニュージーランドは新年の翌日の休日、豪州、中国、香港、シンガポール、南アフリカ、英国、米国、カナダなどが新年の振替休日で休場のため、動意に乏しい展開が予想される。
 しかしながら、先週末の日経報道を受けて、日銀ピボット(日銀の金融政策正常化)への警戒感が高まりつつあり、円高リスクが高まりつつある。

 今年のドル円のファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を確認しておきたい。
■ファンダメンタルズ分析
【ドル買い・円売り材料】
・2022年12月FOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)で、2023年末のターミナルレート(利上げの最終到達点)が5.10%(FF金利:5.00-25%)と示されたこと
・新日銀執行部の下でも、イールドカーブコントロール(YCC)の上限+0.5%が堅持される可能性が示唆されていること
・日本の貿易赤字が継続する可能性
・台湾有事による極東の地政学リスク(有事のドル買い)

【ドル売り・円買い材料】
・米国経済がリセッション(景気後退)に陥り、FEDピボット(FRBの利下げ転換)が開始される可能性
・BOJピボット(日銀の利上げ転換)により、新日銀執行部がマイナス金利とYCCを解除する可能性
・原油・商品価格の低下で、日本の貿易赤字が縮小する可能性
・中国発の新型コロナウイルス感染拡大を受けたリスク回避

■テクニカル分析
 ドル高・円安8年サイクルからは、2023年6月頃の152.70円(V計算値=125.86円+26.84円)での反転が見込まれている。しかし、昨年10月の高値151.95円でピークアウトした可能性もあることで、留意しておきたい。
 ピークアウトが2022年10月の151.95円だったのか、あるいは2023年6月頃かは不明だが、判断材料は、151.95円を頭とするヘッド・アンド・ショルダーのネック・ライン(130.41円・130.58円)が維持されるか否かとなる。すなわち、ヘッド・アンド・ショルダーが稀な上昇トレンドの途上に出現するパターンとなるのか、それとも通常パターン通りに高値反転となるのかを見極めることになる。

 中期的には、2022年10月21日の高値151.95円を頭、ネック・ラインを130.41円と130.58円にした「ヘッド・アンド・ショルダー」を形成中であり、現在は、A波動(5波動)の下落に続くB波動(3波動)で左肩の139.39円に対応する右肩を形成中だと思われる。
 右肩を形成した後は、C波動(5波動)での下落でネック・ラインを下抜けて、天井圏での反転パターンであるヘッド・アンド・ショルダーが完成することになる。そして、頭(151.95円)からネック・ラインまでの値幅30円程度の下落、すなわち、110円台を目標値とする下落トレンドがシナリオ(1)となる。
 このシナリオ(1)では、ドル高・円安8年サイクルの2023年6月が、2022年10月に前倒しされたことになり、ドル安・円高の要因としては、FEDピボット(FRBの利下げ転換)やBOJピボット(日銀の利上げ転換)が想定される。
 しかし、ヘッド・アンド・ショルダーは、天井圏での反転パターンの他に、上昇トレンド途上での保ち合いパターンもある。すなわち、ネック・ラインで下げ止まり、V計算値の152.70円処(=125.86円+26.84円)や斜行三角形の起点である1990年4月の高値160円台を目指すシナリオ(2)の可能性も残されている。
 このシナリオ(2)では、ドル高・円安8年サイクルの2023年6月と米連邦公開市場委員会(FOMC)のドット・プロットでのターミナルレート5.10%(※FF金利誘導目標5.00-25%)への到達時期が整合的となる。


(山下)
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