東京為替見通し=ドル円、FEDピボットとBOJピボット先送り観測で堅調推移か

 3日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、1月米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比51.7万人増加し、失業率が3.4%へ低下していたこと、1月米ISM非製造業指数が55.2だったことなどで、131.20円まで上昇した。ユーロドルは1.0940ドルから1.0793ドルまで下落した。ユーロ円は142.35円まで上昇した。ポンドドルは1.2048ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米国1月の雇用統計がポジティブサプライズだったことや次期日銀総裁候補に雨宮副総裁の可能性が高まったことで、堅調推移が予想される。
 米国1月の雇用統計のポジティブサプライズは、FEDピボット(FRBの利下げ転換)を先送りし、雨宮日銀総裁の誕生は、BOJピボット(日銀の利上げ転換)を先送りする可能性を高めることで、ドル高・円売り要因となる。
 日本時間6日午前2時に日本経済新聞電子版が「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診。政府・与党が最終調整」との速報記事を出したことを受け、日銀の金融緩和継続期待が高まっている。
 ドル円は、早朝のオセアニア市場では、3日のニューヨーク市場の終値131.19円(高値131.20円)から窓を空けて上昇して、132円台まで買われている。

 米国1月の非農業部門雇用者数が前月比51.7万人の増加、失業率は1969年5月以来の低水準となる3.4%だったことで、パウエルFRB議長が懸念していた労働市場の需給逼迫が確認された。
 フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場では、3月と5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.25%の追加利上げが続き、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が5.10%(※FF金利誘導目標5.00-25%)まで上昇し、12月のFOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)で示されたように、今年末まで高金利が維持される可能性が高まりつつある。
 懸念材料としては、1月の平均時給は前月比+0.3%、前年同月比+4.4%となり、12月の前月比+0.4%、前年同月比+4.8%から低下していたこと、不完全雇用率と長期失業者の割合が上昇していたこと、年次基準改定と季節調整と産業分類の改定によるポジティブサプライズの可能性が指摘されていることなどが挙げられる。すなわち、米国の1月の雇用関連指標は、以下の通りにまちまちの結果だった。

         【2023年1月】   【2022年12月】(〇改善・●悪化)
【改善】
〇失業率:      3.4%     3.5%
〇非農業部門雇用者数:+51.7万人   +26.0万人
〇新規失業保険申請件数(1/12週):19.2万件 21.6万件
〇失業保険継続受給者数(1/12週):166.6万人 171.8万人
〇消費者信頼感指数(勤労市場格差):36.9% 34.5%
〇ISM非製造業雇用指数:50.0      49.8
【悪化】
●ISM製造業雇用指数:50.6      50.8
●ADP全国雇用者数:+10.6万人    +25.3万人
●シカゴ購買部協会雇用指数:42.0    42.6
●米企業の人員削減数(チャレンジャー社):+440.0%  +129.1%

 米1月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で+440%、すなわち、約5.4倍増の10万2943人だった。そして、3カ月連続で2倍を超える増加となっており、米国のIT企業による人員削減の影響が現れている。
 先週のFOMC後のパウエルFRB議長の会見では、ハト派的な見解としては、ディスインフレへの言及と適切な金利水準までの「道半ば」を封印したことが挙げられる。
 タカ派的な見解としては、年内の利下げの可能性を否定し、労働市場の逼迫への警戒感を示したことが挙げられる。
 1月の米雇用統計は、パウエルFRB議長の労働市場への警戒感を堅持させる内容だったことで、パウエルFRB議長と共に「今後の状況を見て(we’ll see)」いくことになる。


(山下)
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