株式明日の戦略-イベント前でも売りは手控え、パウエルFRB議長の発言に注目が集まる

 7日の日経平均は3日続伸。終値は71円高の28309円。まちまちの米国株を受けて小幅に下げて始まったが、下押し圧力は限定的。すぐにプラス圏に浮上すると前場では上を試す流れとなり、上げ幅を3桁に広げた。28400円手前では上値が重くなり、後場は伸び悩んでやや上げ幅を縮めた。しかし、パウエルFRB議長の議会証言を前にしても値上がり銘柄は多く、プラス圏で落ち着いた動きが続いた。TOPIXが取引時間中と終値の両方で昨年来高値を更新している。

 東証プライムの売買代金は概算で2兆7800億円。業種別では鉱業、鉄鋼、銀行などが上昇している一方、海運、パルプ・紙、不動産などが下落している。2月の月次売上高が既存店、全店とも前年同月比で大幅増となったオンワードホールディングス<8016.T>が急騰。半面、2月の既存店売上高が前年割れとなったセリア<2782.T>が大幅に下落した。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1248/値下がり493。証券会社が投資判断を引き上げた神戸鋼が大幅高となり、連日で昨年来高値を更新。スポンジチタンの輸出価格交渉に関するニュースを手がかりに東邦チタニウムが急騰し、大阪チタニウムも連れ高した。東京都がEV充電器に力を入れるとのニュースを材料に、モリテックスチール、エネチェンジ、東光高岳が人気化。WBCの強化試合で大谷翔平選手が大活躍したことを受けて、ハブやミズノが関連銘柄として買いを集めた。

 一方、米国でナスダックが下落したことからグロース株が売られる展開。レーザーテックが3.6%安と下げが大きかったほか、東京エレクトロン、TDK、ロームなど前日強かったハイテク大手がさえない動きとなった。米国の長期金利が高止まりしており、三井不動産や三菱地所など不動産株が全般軟調。H3ロケットの発射失敗が伝わったことを受けて三菱重工が大きく値を崩す場面があった。

 日経平均は3日続伸。6日の米国株は小動きで、パウエルFRB議長の議会証言を前にしてもそれほど警戒ムードが高まらなかった。これを受けて、東京市場でも売り急ぎが抑制された。主力どころではレーザーテックがグロースの象徴的な銘柄として売りを浴びたが、他では大きく下げた銘柄が少ない。本日のパウエル議長の議会証言で、次回FOMCに対する手がかりが出てくるか、また、発言に対して米国マーケットがどういった反応を示すかが注目される。

 アトランタ連銀ボスティック総裁の発言から、市場が次回FOMCで0.25%の利上げを織り込んで動いていることは、パウエル議長も十分認識していると思われる。そのため、現時点で議長が0.5%利上げを選択肢として残しておきたいと考えているのであれば、このタイミングでそれを示唆する可能性が高い。そういった話が出てくれば、米国株の反応は売りになると思われる。このシナリオの場合の焦点は、パニック的な下げになってしまうのかどうかということ。0.5%は全く予想できなかったというほどのネガティブサプライズではない。米国株が常識的な下げにとどまるのであれば、株式市場はインフレを克服しつつあるとの見方が強まる展開も想定される。

 議長から株式市場をけん制する話が出てこなかった場合は、次回会合での利上げ幅は0.25%が濃厚となる。その場合には、週末10日に出てくる米2月雇用統計に対する警戒も大きく後退するであろう。こちらのシナリオでは売り方の買い戻しを巻き込んだ踏み上げ的な上昇が期待でき、日経平均は28500円や昨年11月24日の高値28502円を上回る可能性が高い。
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。