東京為替見通し=ドル円、米金融システム不安で週明けは売りが先行

 先週末のニューヨーク外国為替市場でドル円は続落。米雇用統計の結果を受けて今月21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%の利上げ観測が後退し、ドル売りが優勢となった。ドル円は一時134.12円まで大幅安となり、ユーロドルは1.0701ドルまで上昇した。また、ユーロ円は米株の大幅安も重しとなるなか、ドル円の下落につられ143.35円まで下押した。

 先週末に米シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことを受けて金融システム不安への警戒感が高まるなか、早朝からドル売りが先行した。今回の破綻はリーマンショックが起きた2008年以来、最大規模だということでもあり、市場の不安が高まっている。米連邦準備理事会(FRB)と米財務省は、「米連邦預金保険公社(FDIC)理事会とFRB、イエレン米財務長官はFDICによるシリコンバレーバンク(SVB)問題解決への措置を承認」「SVBの破綻に伴う損失を納税者が負担することはない」「銀行システムへの国民の信頼を強化することで米経済を守るための断固とした行動を取る」などの緊急声明を発表した。引き続き関連のヘッドラインに注目。

 先週末のドル円は日銀金融政策決定会合と2月米雇用統計の結果を受けて荒っぽい動きとなった。黒田日銀総裁の最後となる日銀金融政策決定会合では市場予想通りに現行の緩和策の継続を決定した。ただ、一部では「次期総裁への置き土産として、緩和修正に向けた調整的な措置を講じる可能性がある」のとの期待もあり、日銀金融政策イベントを通過した後は円売りが優勢となった。一方、米2月雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を上回った一方で、同失業率と平均時給は予想より弱い結果となった。市場では今月の米FOMCでの0.50%の利上げ観測が後退し、米長期金利の低下に伴うドル売りに傾き、ドル円は大幅反落した。

 パウエルFRB議長は先週の議会証言でターミナルレートの引き上げと利上げ幅再拡大の可能性を示唆したが、まだ利上げペースの加速を決めたわけではなく、「今後のデータ次第」とのコメントも加え、2月米雇用統計の結果に大きく反応する格好となった。市場ではパウエル議長の発言を受けて台頭した3月FOMCでの0.50%利上げ思惑が米雇用統計を背景に後退したが、確信につながったとはいえず、14日に予定されている2月米消費者物価指数(CPI)への注目度が一段と高まっている。インフレ高進を再燃させる内容でなければ、0.25%利上げを織り込む動きが加速するが、CPIが逆の結果となればFRBが再び0.5%利上げに踏み切るとの思惑が高まる。また、米SVBの経営破綻がFRBの政策運営に影響を与える可能性もある。本日は注目のイベントが予定されておらず、翌日に米CPIの発表を控え、米長期金利の動向や米SVB関連報道を眺めながらドル円は神経質な動きが続きそうだ。

(金)
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