東京為替見通し=今週はFOMC、まずはクレディ・スイス買収の影響を見定め
17日のニューヨーク外国為替市場でドル円は131.56円まで下落。金融システム不安を巡る警戒感や米ミシガン大学が発表した1年期待インフレ率速報値が3.8%に低下で売りが強まった。ユーロドルは低調な米経済指標や米金利低下に伴うドル売りで1.0685ドルまで上昇した。
今週は21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えてはいるものの、本日の東京外国為替市場では、まずスイス金融再編の影響を見定めながらの取引か。
スイスでは19日、金融再大手UBSグループが財務不安の高まっていたクレディ・スイス・グループを買収することで合意。これを受けて早朝のオセアニア市場では、ドル円が132円半ばまで上昇する局面があったもののすぐに押し戻された。ここからはアジア勢の本格参入を待つことになる。
CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、0.25%の利上げ確率が6割程度、据え置き確率が4割程度。5月FOMCでは据え置き確率が高くなり、6月FOMCでは利下げ確率が高まり、年内4回(7月、9月、11月、12月)は、利下げ確率が高く、年末のFF金利誘導目標は3.75-4.00%と示唆されている。
昨年12月のFOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)は、2023年末のターミナルレート(利上げの最終到達点)を5.10%(※FF金利誘導目標5.00-25%)と予想していた。パウエルFRB議長は、今年2月のFOMC後の会見で、年内の利下げの可能性は想定せずと述べ、3月7日の議会証言で、利上げペース加速の用意がある、と述べていたが、市場の見立ては逆行している。
21-22日のFOMCでは、16日の欧州中央銀行(ECB)理事会のように金融安定よりも物価安定に軸足を置いて0.25%の第9次利上げに踏み切るのか、それとも金融安定に軸足を置いて据え置きを決定するのか、要注目となる。
2023年1月の米国の経済指標は、米国景気が減速はするものの、景気後退は避けられる「ソフト・ランディング(Soft Landing)」や景気後退に陥る「ハード・ランディング(Hard Landing)」ではない、「ノー・ランディング(No Landing)」の可能性を高めていた。しかし、3月の米シリコンバレーバンク(SVB)やクレディ・スイスの経営危機は、2008年3月のベアスターンズの経営危機から9月のリーマンショックまでの金融危機を彷彿とさせており、1月の好調な米経済指標が「偽りの夜明け」だった可能性を高めている。
米国は1月19日に債務上限(31兆4000億ドル)に到達し、2月年末時点での債務残高は31兆4593億ドルとなっており、債務上限が引き上げられなければ、7月辺りに政府資金が枯渇する「Xデー」を迎える。
米国10年債の利回りは、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ(ゼロ⇒4.50-75%)により、2022年3月の2%台から今年3月の4%台まで上昇し、価格は12%程度下落している。すなわち、31兆の債務を米国10年債と仮定した場合、米国債の保有者は3兆ドル強の損失を被っていることになり、現状の小さな金融危機は、2008年のようなグローバル金融危機
に拡大する予兆に過ぎないのかもしれない。
FRBは、「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を新設して、米国債や住宅ローン担保証券を含む適格担保を「時価評価」ではなく「額面評価」とし、流動性を供給することで準量的金融緩和と言える。しかし、0.25%の利上げを断行した場合、金融引き締めを継続することになり、整合性が取れなくなる。
(山下)
今週は21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えてはいるものの、本日の東京外国為替市場では、まずスイス金融再編の影響を見定めながらの取引か。
スイスでは19日、金融再大手UBSグループが財務不安の高まっていたクレディ・スイス・グループを買収することで合意。これを受けて早朝のオセアニア市場では、ドル円が132円半ばまで上昇する局面があったもののすぐに押し戻された。ここからはアジア勢の本格参入を待つことになる。
CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、0.25%の利上げ確率が6割程度、据え置き確率が4割程度。5月FOMCでは据え置き確率が高くなり、6月FOMCでは利下げ確率が高まり、年内4回(7月、9月、11月、12月)は、利下げ確率が高く、年末のFF金利誘導目標は3.75-4.00%と示唆されている。
昨年12月のFOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)は、2023年末のターミナルレート(利上げの最終到達点)を5.10%(※FF金利誘導目標5.00-25%)と予想していた。パウエルFRB議長は、今年2月のFOMC後の会見で、年内の利下げの可能性は想定せずと述べ、3月7日の議会証言で、利上げペース加速の用意がある、と述べていたが、市場の見立ては逆行している。
21-22日のFOMCでは、16日の欧州中央銀行(ECB)理事会のように金融安定よりも物価安定に軸足を置いて0.25%の第9次利上げに踏み切るのか、それとも金融安定に軸足を置いて据え置きを決定するのか、要注目となる。
2023年1月の米国の経済指標は、米国景気が減速はするものの、景気後退は避けられる「ソフト・ランディング(Soft Landing)」や景気後退に陥る「ハード・ランディング(Hard Landing)」ではない、「ノー・ランディング(No Landing)」の可能性を高めていた。しかし、3月の米シリコンバレーバンク(SVB)やクレディ・スイスの経営危機は、2008年3月のベアスターンズの経営危機から9月のリーマンショックまでの金融危機を彷彿とさせており、1月の好調な米経済指標が「偽りの夜明け」だった可能性を高めている。
米国は1月19日に債務上限(31兆4000億ドル)に到達し、2月年末時点での債務残高は31兆4593億ドルとなっており、債務上限が引き上げられなければ、7月辺りに政府資金が枯渇する「Xデー」を迎える。
米国10年債の利回りは、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ(ゼロ⇒4.50-75%)により、2022年3月の2%台から今年3月の4%台まで上昇し、価格は12%程度下落している。すなわち、31兆の債務を米国10年債と仮定した場合、米国債の保有者は3兆ドル強の損失を被っていることになり、現状の小さな金融危機は、2008年のようなグローバル金融危機
に拡大する予兆に過ぎないのかもしれない。
FRBは、「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を新設して、米国債や住宅ローン担保証券を含む適格担保を「時価評価」ではなく「額面評価」とし、流動性を供給することで準量的金融緩和と言える。しかし、0.25%の利上げを断行した場合、金融引き締めを継続することになり、整合性が取れなくなる。
(山下)